研究課題/領域番号 |
26380448
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岩間 剛城 近畿大学, 経済学部, 准教授 (30534854)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農村金融組織 / 共同性 / 上塩尻村 / 永続講 / 銀行 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近世末・近代日本農村における共同性に留意しつつ、農村地域において形成された地方金融組織の状況について、経済史の観点からの実証的な解明を目指すことである。 研究初年度であった平成26年度においては、長野県上田市立博物館、長野県上田市上塩尻、および長野県長野市立博物館において資料調査を行った。これにより、(1)信濃国小県郡上塩尻村において組織された金融講・銀行に関連する資料についての閲覧・複写、および(2)信濃国川中島今井村において組織された金融講に関連する資料についての閲覧・複写を行った。(1)信濃国小県郡上塩尻村に関する資料においては、同村で組織された永続講に関する文書と、塩尻銀行営業報告書の断片を確認することができた。(2)信濃国川中島今井村に関する資料においては、同村で組織された金融講に関する文書の残存を若干確認することができた。 また、愛媛大学で開催された比較家族史学会秋季大会において、調査によって確認した資料から得られた情報の一部を用いて「馬場家の家計と蚕種取引」の題名で報告を行った。同報告では、上塩尻村において有力な蚕種家の一つであった馬場家の家計と、上塩尻村で設立された金融講であった永続講との関わりについての考察を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成26年度においては、当初の研究計画に従い、データ処理に必要とされるデジタルカメラ・パソコン・外付けHDDなどの各種機器を購入した上で、長野県上田市・長野県長野市に出張し、古文書史料調査を行った。これにより、本研究の課題である、過去の農村金融組織に関する、当時の実態を探る手がかりを得ることができた。また、一連の古文書史料から得られた金融講に関連する情報の一部を用いて、比較家族史学会において研究報告を行った。 以上のような史料調査・研究報告を通じて、次年度以降の研究を進めるための方向性を確認することができた。当初想定していた研究計画については、ある程度順調に進展したと考えられる。ただし、長野県上田市立博物館をはじめとして、長野県上田地方に残存している農村金融関連の古文書は、当初の想定よりも現存している量は多い事が判明した。そのため、今後も積極的かつ継続的に、現地での史料調査を行って対応する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究年度として2年目に当たる平成27年度においては、研究初年度であった平成26年度に行った史料調査・学会報告を通じて得られた成果・課題を念頭に置きつつ、長野県での古文書資料調査を継続的に行う。近世・近代の農村社会において農村金融組織が結成・維持された背景にある共同性の実態についての把握がまだまだ不十分であることが確認されたので、その点の実証的解明を目指して、特に古文書史料調査に重点を置いて研究を進める。 また、各種学会・研究会へ積極的に参加し、研究成果発表・研究論文執筆に際して必要とされる、近世・近代の農村社会・農村金融組織に関する学問的知見を、より一層深めていくことを目指す。日本経済史の研究者に止まらず、異分野の研究者から、多様な視野に基づいたコメントを受けるように心がけ、より一層の研究の深化を図る。さらに必要に応じて、関連分野の書籍購入も行う。 本研究では実態調査研究が主体となるため、まず第一に研究代表者が、調査対象地である長野県を複数回訪問し、史料調査を行う必要がある。これには、当然ながら多額の経費が必要となる。この他にも、東京をはじめとして、各地で行われる各種学会・セミナー・研究会において、分析手法や分析内容の検討・専門的知識の習得を図ることを考えている。以上の点より、国内旅費が研究費支出の中心となる。
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