本研究の目的は、近世末・近代日本農村における共同性に留意しつつ、農村地域において形成された地方金融組織の状況について、経済史の観点からの実証的な解明を目指すことである。 研究年度として最終年度に当たる平成28年度においては、研究初年度に購入したデジタルカメラ・パソコン・外付けHDDなどの各種機器を用いた上で、長野県立歴史館・明治大学博物館において古文書資料調査を継続的に行った。信濃国小県郡上塩尻村に関する資料としては、同村で展開していた蚕種取引や金銭貸借に関する文書を、昨年度に引き続き追加的に閲覧・撮影することができた。上塩尻村の近隣村である信濃国小県郡下塩尻村においても、上塩尻村で結成されていた永続講に類似した、農村金融組織が形成されていた事を、確認することができた。 また昨年度に引き続き、近世末・近代日本の農村史や金融史に関する各種学会・研究会に積極的に参加し、研究成果発表・研究論文執筆に関して必要とされる、近世末・近代日本の農村社会・農村金融組織に関する学問的知見を深めることを目指した。日本経済史の研究者に止まらず、西洋経済史・地理学・社会学などの他分野の研究者から、農村金融組織に関する多様な視点からのコメントを受けた。 なお平成28年11月には、東北大学経済学部で開催された社会経済史学会東北部会において、本研究の研究成果の一部を「信州上田藩上塩尻村直毘講について」の題で報告した。同部会での報告内容を元にして、学術雑誌である『研究年報 経済学』(東北大学経済学会発行)に論文を投稿した。
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