研究課題/領域番号 |
26380449
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
濱島 敦博 吉備国際大学, 地域創成農学部, 准教授 (70581528)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 市場秩序 / 商会 / 取引費用 |
研究実績の概要 |
本研究は、民国期初期の中国において、総商会などの経済組織が市場秩序の形成において果たした役割を史資料に基づいて明らかにし、近代中国における市場秩序の形成過程の全体像を描くことを目的としている。特に、近代中国における重要な商埠の一つである青島を対象とし、青島総商会(及びその全身である青島商務総会)による商事紛争案件の解決及び処理事例の分析を通じて、市場秩序の形成過程の解明に関する実証研究を行ってきた。 具体的には、個々の紛争案件を巡る、紛争当事者、商会、司法機関等の各種ステークホルダー間でやり取りされた文書、書簡等の資料から、紛争解決過程における総商会の機能について解き明かし、当時の企業や商人(「商号」)にとって総商会による紛争解決機能が持つ意義を歴史制度分析の観点から経済学的に考察した。これにより、総商会が、司法機関とは異なり、強制執行や紛争当事者の拘束等の権限を持たないものの、帳簿調査による債務関係の明確化や紛争当事者の信用調査など、紛争解決過程において重要な役割を果たしていたことが明らかになった。このことから、総商会という第三者的な主体に紛争解決費用を含む取引費用を引き下げる機能があり、近代中国の市場経済の枠組みが多様な組織が関与することによって形成されていたことがわかる。 なお、平成28年度は、平成27年度までに収集した資料の整理、分析を実施する中で、関連資料の更なる収集の必要性が認められ補足調査の実施を試みたが、下記に記載する事情により調査の実施ができなかった。同所蔵機関には、これまで収集した紛争案件以外にも、多くの関連資料が所蔵されており、今後は、補足調査とともに異なる紛争案件に関する資料も収集していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、資料所蔵機関の都合により、補足の資料収集調査を実施できなかったため、「やや遅れている」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度に実施できなかった補足調査を再び試みる。(もし平成29年度も前年度と同様に実施が不可能な場合には、調査を実施する所蔵機関を早期に再選定する。)また、同所蔵機関には、中国の市場秩序論研究の領域において重要と目される資料が多数残されており、これまで調査してきた商事紛争案件以外の案件に関する資料を中心に収集、整理に努める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時に予定していた調査が、調査先の都合で実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度中に、調査を実施する予定である。
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