本研究は、民国期初期の中国において、総商会などの経済組織が市場秩序の形成において果たした役割を資料に基づいて明らかにし、近代中国における市場秩序の形成過程を考察することを目的としている。商事紛糾を巡って、紛糾当事者、商会、司法機関等の関係者間でやり取りされた文書、書簡等の資料から、紛争解決過程における総商会の機能を分析し、総商会による紛争解決機能が持つ意義を経済学的に考察した。総商会が提供する紛糾解決サービスには取引費用を引き下げる機能があり、近代中国の市場秩序が多様な組織が関与することによって形成されていたことがわかる。
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