研究課題
本研究の目的は,コミュニティ型ワークスペースにおけるコラボレーションの生成・展開過程を解明することである。具体的には,聞き取り調査や参与観察などの質的手法と質問票調査という量的手法を併用し,研究を遂行していくことが目指されている。研究期間の5年目である平成30年度の主要な成果として,「コワーキングスペースにおけるコミュニティ構築とサステナビリティ向上の要因」が挙げられる。本論文の目的は,質問票調査にもとづき,コワーキングスペースにおけるコミュニティ(交流・協同)構築とサステナビリティ(売上・利益)維持・向上の影響要因を明らかにすることである。具体的には,ウェブ調査を実施し,日本で稼働しているコワーキングスペースの全数に近い(2014年7月時点)と考えられる365スペースのうち,168スペースから得たデータを分析し,コミュニティ構築とサステナビリティ維持・向上に関する重回帰分析の結果が示された。分析結果から,(1)コミュニティとサステナビリティのいずれかに影響を与える要因 (コミュニティ志向(たとえば,非会員の利用時間),サステナビリティ志向(たとえば,一時利用者の割合)) ,(2)コミュニティとサステナビリティを同時に追求できる要因(両立志向(利用者間の交流)),(3)コミュニティとサステナビリティのトレードオフを生じさせる要因 (トレードオフ(オープンスペース座席数)) が示唆された。なお,本論文に関する知見は,平成30年7月に開催された34th European Group for Organizational Studies Colloquiumにおいて報告されている。コワーキングスペースやファブラボなどに代表されるコミュニティ型ワークスペースに関する経験的な知見は依然として不足しているため,上記の成果は,一定の理論的・実践的意義を有すると考えられる。
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Discussion Paper, Series B
巻: 159 ページ: 1-27
Discussion Paper, Series A
巻: 329 ページ: 1-29