研究課題/領域番号 |
26380451
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
白田 佳子 法政大学, イノベーション・マネージメント研究センター, 研究員 (80289793)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 企業倒産 / 経済環境 / ROE / 民法改定 / コーポレートガバナンス / 企業財務 |
研究実績の概要 |
1. 新たなデータの加工を実施し簡易分析を実施した。追加データは帝国データバンク・日本経済研究所「企業財務データバンク」データから抽出し(1)27年度倒産企業データ(非上場・上場企業)(2)27年度継続企業データ(非上場・上場企業)の分析を行った。さらに、27年度経済データの収集を行い26年データに追加した。 2.27年にコーポレートガバナンス・コードが東京証券取引所から公表され、企業及び投資家、ステークホルダーにおいてROEへの関心が高まったことから、当初の予定にはなかったが、10万期に及ぶ企業財務データバンクの上場企業データからROEと相関の高い指標の抽出、1971年から45年間の経済環境の変化とROEとの関係の分析を実施した→28年度の学会発表などに反映させる予定である。 3. 諸外国情報収集(ABI訪問、協議)の実施。American Bankrupt Institute(ABI)から資料収集(一部オンライン収集可能)を行った。近年アメリカでは倒産法が目まぐるしく改訂されている。ABIは多面的に米企業の倒産について情報収集・分析を行う機関である。同機関が解析した、企業倒産と経済環境変化に関わるデータを参考資料として入手し我が国の傾向との比較を実施した。 4.平成27年に民法改定が法制審議会で可決され(国会承認時期は未定)売掛金回収期間の時効が2年から5年に延長された。このことは今後の企業倒産に多大なる影響を及ぼすことが予想されることから法人企業統計を用いて売掛金回収期間が延長されることによる倒産の増加可能性についての分析を追加的に実施した。またこの結果は積極的に学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
あらたな掲載環境の変化(民法改定など)による分析を実施するなど、当初予定にはない追加分析を大量に実施したことから作業量は増えているが、おおむね研究は順調に進んでいる。国の政策方針が不安定であるため(消費税増税の不確実性等)環境の変化との比較分析に苦慮している面は否めない。
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今後の研究の推進方策 |
我が国では平成27年に倒産発生件数について戦後最少記録を塗り替えた。倒産が減少している背景には建設業の倒産が減少している事があげられる。我が国では倒産の増減は、ほとんどが建設業の状況に依拠してきたからである。平成23年の東北大震災以降多くの建設需要が興ったこと、さらに前後70年を迎え多くの都心のビル等が減価償却期間を超え、再建築の時期に入るなど建設業が活況であることが倒産減少の背景にある。またゼロ金利(マイナス金利)政策の中で資金を有効活用すべき政策が打ち出されながら、企業は余剰金を負債返済に充てさらに内部留保を積み上げる、投資資金は自己資金で賄うという傾向が今まで以上に強まっている。この傾向は、アメリカABIの資料などと比較しても日本独特の傾向といえよう。本研究をスタートしてから様々な(予想を超える)経済政策が打ち出されているが、景気という側面では明るさは見えないものの、企業内部の資金は潤沢であり、経営状態は安定している。つまり企業の倒産が極端といえるほど減少している実態は不確実性(リスク)への過剰なまでの反応の現れであり、我が国固有の経営手法(経営感)によるもの、さらには寛容な株主の存在によるものといえよう。この姿勢はコーポレートガバナンスコードの報告義務付けにより若干変化がみられると予想されるが、企業が危険を冒してまで(倒産のリスクを高めながら)積極的経営に向かうには、経済環境(政府の政策)が不安定過ぎる感がある。今年度、これらについて、明確にモデル化したアウトプットを構築し、学会発表を積極的に実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の達成に欠くことのできない帝国データバンクの財務データは、おおよそ40万円程度必要となる。当初の配分額は最終年度の配分が少なく、データ購入とともに学会発表などの出張費用を支弁することは困難であったことから、データ購入、及び学会出張が可能な額を基金化を利用して繰り越した。ちなみに帝国データバンクのデータ購入は、当初の研究計画に明確に内容が記述されており、本計画実施の主要な経費である。研究達成には欠かせない予算である。また予算配分を考慮し平成27年度に予定していた海外学会への参加を平成28年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
(1) 帝国データバンク財務データ・日本経済研究所データ 400,000円、(2) ソフトウェア保守料(プログラム更新)500,000円、(3) プリンタリボンなど消耗品 100,000、(3) 海外出張 430,000円 (4)国内出張 5万円
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