研究実績の概要 |
本研究課題の最終年度である本年度は、日本を中心とした各国の企業の組織形態(会社形態)と経済発展との関係について検討を継続するとともに、これらを国家間で比較し、一般的なモデルを構築することを試みた。 まず、日本については、現代における会社形態の利用について、イノベーションを促進する目的で導入された合同会社と有限責任事業組合という2つの会社形態が実際にどのように利用されているかを検討し、これらが実際には多国籍企業の節税や金融スキームの道具、あるいはジョイントベンチャーにおける過渡的形態として利用され、イノベーションの促進には必ずしもつながっていなかったことを明らかにした。また、昨年度はまだ中途段階にあった戦前の財閥による会社形態の利用について、合名会社を本社とする三井財閥と、株式会社を本社とする渋沢財閥を比較し、それらが欧州の金融パートナーシップと公開会社に影響を受けていること、その背後には会社に関する二つの見方があることを明らかにした。この結果として、日本については会社形態と経済発展との関係の全体像をある程度明らかにしえたと思われる。 この上で他の諸国との比較については、まず日本の植民地支配下にある朝鮮と日本の会社形態の発展を比較し、朝鮮においては朝鮮会社令に基づく設立制限の下で、株式会社の利用が多かったこと、しかし会社令廃止後には合名・合資会社の利用が増えること、日本(内地)では1931, 32年前後以降に合名・合資会社の利用は鈍化するのに対して、長選ではそのような傾向がみられないことを明らかにした。他の国との比較については、植民地期のベトナムや戦前の中国に関するデータ収集が十分に進んでいないため、まだ完成していない。 これ以外に、関連する研究として多国籍企業における持株会社の利用に関する研究、企業システムの発展に関する研究、及び企業の契約の法的保護に関する研究を行った。
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