研究課題/領域番号 |
26380457
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
田名部 元成 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (10313462)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 情報システム / ゲーミング / 人材育成 |
研究実績の概要 |
IT成果物をその利用者という複合システムにおける問題解決やパフォーマンス向上を目的としたデザイン科学的アプローチによる情報システム研究の依拠する哲学的基盤と、組織内部のプロセスや制度の現状認識、将来設計、とるべき戦略の事前評価と合意形成を目的とした問題解決指向のゲーミングアプローチの依拠する哲学的基盤が、共にプラグマティズムにあることを明らかにした。これにより、ゲーミングとデザイン科学的情報システム研究の融合可能性がより確実なものとなった。 情報システム人材に求められるスキルを21世紀型スキルや情報処理推進機構(IPA)のコンピテンシー評価基準などを参考に整理した上で、キュレーション学習を用いた反転学習を適用した授業実践を行い、情報システム人材育成に対する教育・学習の効果を測定・評価した。結果、社会的動機付けによる学習を原理とした教育手法の可能性が示唆された。これにより、ゲーミング構築を通じた学習を意図する教育デザインに対して、社会的動機付けという原理が利用可能であることが示された。 ゲームの経験を通じて情報システムにおける重要事項がいかに学ばれ得るのかについて探求するために、情報システム構築における意思決定をCIOの立場から行うゲームを開発し国際会議ワークショップで実施した。収集データの分析から、情報システム構築においては、組織的文脈の取り扱いが重要であり、数値的な意思決定や情報提示よりも言語的あるいは定性的な意思決定と情報提示がより適していることが明らかとなった。これにより、ゲーミング構築を通じた学びを意図する教育においては、文脈的要素をいかに顕在化させ、顕在化した文脈的要素をゲーム設計者とプレイヤーに維持させるかが重要な鍵であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の当初目標(1)デザイン科学IS研究とビジネスゲーム構築の両アプローチに共通の哲学的基盤の整理、および(2)ゲーミングシミュレーションの構築から学ぶという学習手法の理論的基盤の整備については、計画通り進んだが、これらの成果公表が年度内十分に行えなかった。また当初目標(3)ゲーミングシミュレーションの構築を通じて学習が行えるプラットフォームの開発については、部分的なプロトタイプの構築とその実験のとどまっており、本格的な構築に着手できなかった。これらの遅れは、学内業務負担の不測の大幅増加が起因しており、本研究に対するエフォート率を当初予定ほどあげられなかった事による。ただし、これらの遅れは、研究計画においてもその可能性も想定しており、次年度には回復できる程度のものである。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間初年度後半に予定していた「ゲーミングシミュレーションの構築を通じて学習が行えるプラットフォームの開発」を重点的に推進する。このプラットフォーム完成時期を平成27年度上半期から同年下半期へと変更する。一方で、本研究での提案手法に対する評価モデルの構築を同年下半期上旬に完了させ、提案手法の有用性および有効性評価を下半期後半に開始できるようにする。このIS人材スキルの評価については、情報システムユーザースキル標準(UISS)(情報処理推進機構)、次世代高度IT人材像(経済産業省)、情報専門学科カリキュラム標準(J07)(情報処理学会)を参考にし、シミュレーション構築を通じて学ぶという提案手法が寄与するスキルを選択する。そして、人材育成パイロットプロジェクトを企画し、開発したプラットフォームを用いて人材育成効果測定のための質的量的データを収集し、提案手法に対する最終的評価モデルを構築する。さらに、ゲーミングを構築する学習を基盤とするいくつかの事例を想定し、これらの実践におけるIS人材育成の評価を行い、事例ごとの利点と欠点を明らかにし、提案手法の弱みと強みをより詳細化することを目指す。研究代表者は、平成27年度より情報基盤センター長を併任することとなったため、情報システム人材育成のための実験等は、情報基盤センター研究部門と協力して行うことで初年度の遅れを取り戻す。また、平成26年度に行った研究は、平成26年度上半期に日本シミュレーション&ゲーミング学会など関連学会の研究集会で発表するとともに、論文誌へ投稿する。
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