研究課題/領域番号 |
26380461
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 大児 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50346409)
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研究分担者 |
福永 晶彦 宮城大学, 事業構想学部, 教授 (10279549)
地村 弘二 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (80431766)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イノベーション / 資源循環・リサイクル / パラダイム転換 / 食品用トレー / 知識創造 |
研究実績の概要 |
本研究は、技術的イノベーションの発生メカニズムを明らかにするという問題意識のもと、新事業の確立によって成長を遂げる企業の戦略的取組みについて、新たな視座の構築を目指した。研究遂行上のコンテクストとして、企業成長の理論を取り上げて批判的検討を段階的に行うこととした。続いて本研究が採用する新たな視座としては野中ほか(2005)でも採用されたルトワクの「垂直的逆説」の論理を応用した(Luttwak, 2001)。ルトワクの戦略的思考法の特徴は、階層的に組織されるプレーヤが複数おり、階層上位では長期的・広域的、また下位では短期的・局所的展望でそれらのプレーヤが相互作用するという視点に立つことである。そして有限資源の有効活用の観点から、短期的・局所的な働きかけを通じて、より上位の勢力地図を塗り替える可能性を垂直的逆説と呼んでいる。第三に、事例の概略を簡単に説明し、その考察を通じて新たな視座の分析的有効性を試論した。具体的には食品用プラスチック製トレーのリサイクル事業の確立を通じた企業成長の事例を通じて、大量生産・大量消費に基礎を置いた現代的製造業のパラダイムが資源循環型のそれへといかに転換したのか、またそのプロセスが一企業のイニシアチブによっていかに達成されたのかを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
藤井大児「資源循環型経済へのパラダイム転換試論:プラスチック製食品用トレーの事例分析」岡山大学経済学部Discussion Paper Series II-76の形で一定の成果を示し、戦略研究学会『戦略研究』に投稿後、フィードバックを受けてはいるものの、修正を行って再投稿するまでには至っていない。今後フィードバックを反映させて改定し、間も無く再投稿するつもりである。 研究分担者の福永氏は、ほぼ同様の問題意識から独立して立派な研究成果を挙げておられるので、本年度岡山大学社会文化科学研究科にて行う予定である研究セミナーに招聘し、成果を共有する予定である。 もう一方の目標であった認知神経科学の側面から知識創造理論の基礎固めを行うという研究目的については、具体的な実験計画の構築に向けて努力している。目下組織内学習の文脈で実験系を位置付けたいと考えており、文献サーベイを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
先のDP投稿後のフィードバックとして主たる指摘は以下の通りである。第一に、なぜ軍事戦略の枠組みであるルトワクの垂直的逆説の議論を適用するのか、その理由がやや分 かりづらい。 第二に、ルトワクの「垂直的逆説」という概念と企業家のイニシアチブによるパラダイム転換がどの ような関係にあるのか、が不明確である。 第三に、事例分析においてルトワクの枠組みがどのように適用されるのかがやや分かりづらい。大量生産→多品種少量→循環型経済へとパラダイムが転換していく際に、垂直的逆説という現象がどのような形で発生してきたのか、あるいは垂直的逆説を促進する主体間の相互作用、ダイナミクスがどのような形で発生してきたのかがやや不明確である。以上の指摘は、上記のDPを学術論文として洗練させるうえで本質的なものであり、これらをうまく反映させることで本申請の掲げた目的のひとつは達成されると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
とくに大きな金額ではなく、当初の計画から大きく外れた実施状況にはないと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由により、当初計画通りの実施を考えている。
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