研究課題/領域番号 |
26380461
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 大児 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50346409)
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研究分担者 |
福永 晶彦 宮城大学, 事業構想学群(部), 教授 (10279549)
地村 弘二 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80431766)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イノベーション / 知識創造 / 組織化の社会心理学 / エリートの周流 / 多数者内少数者 |
研究実績の概要 |
これまで日本の制度的環境下における技術的イノベーションの発生メカニズムを探る過程で, 2つの着想を得た。第一にいわゆる知識創造理論における個人の認知内部における形式知・ 暗黙知のディコトミーを離れ,ミクロ社会学レベルの社会的相互作用への着眼が必要との認識を得た。フィンケらは知識創造理論のひとつの底本と考えられ,革新の阻害要因とともにアナロジ転移による革新の有用性を説いている。特にフィンケらは生成的な認知過程と探索的な認知過程とを合わせ持つジェネプロア・モデルを提唱し,阻害要因として知識の機能的固着性などを挙げ,それらを抑止する社会的・文化的・環境的要因の重要性を指摘した。 第二にパレートの「エリートの周流論」との出会いがあった。その基幹論理は資源的・情報的優位にある者が,社会経済的秩序の辺境部から有為な人材を見出し育てる過程を重視するものであった。先述のジェネプロア・モデルとの関連で言えば,機能的固着性などが必ずしも悪いことではなく,旧来のものが新たな問題解決に有用である場合に、その解釈・修正を通じて新たな発明を見出せるのは,資源的・情報的優位にある旧来の勢力の方だと言う場合である。 このような組織観に照らせば,守旧的な多数者集団とそれ以外の社会的辺境にとどめ置かれた少数者集団との社会的相互作用,および少数者が多数者集団に自身の主張をいかに説得的にアピールするかという問題を提起することにより、イノベーションの発生メカニズムを社会的相互作用のレベルで論じることができる。そこでモスコヴィッチらの少数者の影響過程研究に修正を加え、少数者と「多数者内少数者」との協働という観点から仮説構築を試みた。ただしこの仮説に基づく暫定的な実験結果は、モスコヴィッチらの実験結果と同水準の影響力を発揮したが大きな影響力と言えるものではなかった。今後仮説と実験計画を精緻化することが期待される。
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