研究実績の概要 |
Titmuss(1970)、Deci et al.(1971, 1972)の実証研究の証左より、外在的インセンティブは内発的動機付けをクラウディング・アウト(MCO)することが示された。Gneezy and Rustichini(2000a, 2000b)の実証結果は、さらに明確に、標準的経済理論の選好公理を否定するものであった。経済学は、これ以降、制約条件を変更することで、また、認知心理学は、内発的動機付けを選好の内生的要因とすることで、実証結果を説明する理論モデルを提示しようと試みてきた。本プロジェクトは、経済学の選好の公理に、認知心理学の洞察を組み込むことで、実証研究の証左を説明する統合理論を構築することを試みている。また、統合理論のモデル構築にとどまらず、理論モデルから実験室実験/フィールド・リサーチによる実証研究までを一貫して実施することを目指している。
統合理論のモデル構築では、従来の外在的インセンティブと内発的動機付けの加法的・二分法的分析から、幾分であるが、二要因の相互作用分析にまで進展することができた。また、経済心理学の一般的静学モデルだけではなく、これに、社会規範/集団規範を組み込む動学モデルにまで発展させることを試みている。そして、また、統合理論モデルを、金銭的インセンティブだけではなく、モニタリング、規制等による外的介入にまで応用し、考察することを試みている。さらに、統合理論モデルを質問表に落とし、実験室実験/フィールド・リサーチを行うことで、統合理論モデルと実証研究を一体化させ分析する基礎をつくることができた。
成果公表は、MCOサーベィ(論文)、統合理論、統合理論の応用、および、実証研究のそれぞれで少しばらつきはあるが、それぞれについて、ワーキング・ペーパー作成、研究会報告とフィードバック、そして、最終的に、ジャーナル投稿へと順次進めている。
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