研究課題/領域番号 |
26380468
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
宮川 壽夫 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (30584049)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コーポレート・ファイナンス / イノベーション / 研究開発型企業 / 財務的余裕 / エージェンシー理論 / ROE |
研究実績の概要 |
本研究は、コーポレート・ファイナンス理論を背景とした企業の財務的意思決定に関する実証研究です。研究の目的は、イノベーションを目指す研究開発型企業において、財務的余裕(financial slack)すなわち高い現金保有という「財務流動性」および高い自己資本比率維持という「財務弾力性」がイノベーションを実現する上で価値を創出し、結果として企業価値拡大の予見性を高める、という仮説を多角的に検証することです。エージェンシー理論や情報の非対称性理論を論拠とした従来型の企業行動に対して批判的な立場を採ることによって、無形資産が競争優位となる現代企業の財務的意思決定の現実を説明するところに本研究の特徴があります。 平成27年度(第2フェーズ)はデータベースの構築が最大の目的でした。当フェーズにあたって主に必要なデータは、(1)企業財務に関するデータ、(2)企業の株主構成に関するデータ、(3)株価データ等です。これらのデータベース構築は現状では完全ではないもののほぼ取得に成功しており、おおむね順調と思われます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究におけるデータベースの構築を行うことに成功し、現状では仮説の設定に入っていますが、一方、ひとつの成果として、これらのデータを使用し、本研究のパイロットケースとしての以下の論文を発表したことは非常に意義があったと考えています。 「PBR1倍の非対称性に見える日本企業の低ROE問題」『証券アナリストジャーナル』第53巻 第6号、28-38頁(2015年6月)日本証券アナリスト協会
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今後の研究の推進方策 |
今後は収集したデータの分析作業、ならびに仮説検証に入っていきます。その際のポイントは以下二点です。 第一に、仮説検証作業はもっぱら第2フェーズまでに収集した情報とデータの分析作業となります。まず、本研究が膨大なデータベースを背景としていることから実際の仮説検証作業が進展する過程においては再び大量のデータの蓄積とバックアップが欠かせません。この上での仮説構築を行います。 さらに一旦結論に至った分析結果について再び機関投資家と企業へのインタビュー調査並びに第1フェーズでのインタビューに対するフィードバックを実施します。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究遂行に当たってワシントン大学のJon Karpof教授からの示唆を仰ぐこととなり、2015年3月から10月まで客員研究員としてワシントン大学に赴任しました。そのため27年度に国内で予定していた機関投資家インタビューを28年度に実施するという計画の変更を行ったため、当初予定ほどの調査費がかかりませんでした。一方、米国にて機関投資家のインタビューを行うことができたため極めて意義深い計画変更となりました。
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次年度使用額の使用計画 |
今夏は引き続き、コネクションができたワシントン大学のJon Karpof教授と調査企業を訪ね、1ヶ月間の訪米を計画しております。次年度使用額は生じたものの極めて意味のある計画変更であると評価しています。
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