本研究の目的は、ものづくり企業が地方・地域に立地しながらグローバルな生産環境の中で、製品の付加価値創出の意味で地理的距離のへだたりを超越できるような、あたらしい生産ネットワーク構造のデザインを文理融合型の研究手法により提案することである。その結果から、地方企業が大都市圏に立地するのと同じかそれ以上の強みを発揮できる生産ネットワーク構造を提示し、地域の生き残りへと導くことを目的とする。すなわち、地理的には遠距離に分散する生産拠点群をネットワークとして結合し、各拠点が有する多様な経営資源を組み合わせ、連携させることで、距離空間の隔たりを凌駕するような付加価値を創出可能とするあたらしい生産ネットワーク構造をデザインするための理論を構築したい。 その目的にしたがい,最終年度では平成27年度までの研究成果に加えて,地理的へだたりがあっても付加価値を生む要因と予想される多種多様な経営資源についてのマップを整理した。従来,経営資源とは「ヒト,モノ,カネ」と称され曖昧な形のまま扱われるが,単に「ヒト」といっても従業員数から算出される労働力のような定量的なものから,従業員の技術力やモチベーションといった定性的なものまで考慮されるべきである。この多様な経営資源を生産文化論の考え方を導入し,特に「ヒト」の定性的な資源についてリストアップし,各経営資源要素間の依存関係や相互作用関係をマップとして表現した。この事によって,経営資源の中でも最も重要と考えられる「ヒト」に関する様々な資源要素を構造的にとらえ,資源要素がどこに存在するか,資源と資源の関係性が一目で把握できるようになるので,それぞれの資源要素をどのようにレベルアップさせるべきか,すなわち「ヒト」の育成・教育についても有効な指針が得られることで,企業の戦略的な意思決定に応用することができる.
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