研究課題/領域番号 |
26380473
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
青木 英孝 中央大学, 総合政策学部, 教授 (90318759)
|
研究分担者 |
山野井 順一 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (20386543)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 企業不祥事 / コーポレート・ガバナンス / 取締役会改革 / 執行役員制度 / 社外取締役 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、取締役会特性と企業不祥事の双方向の関係を定量的に解明することにあった。まず、企業不祥事の発生が取締役会の改革に与える影響に関しては、研究が順調に進み、最終的に研究成果を学術論文「コーポレート・ガバナンスと企業不祥事の実証分析」にて公表した。論文では、不祥事を意図的なものと事故的なものに分類し、社外取締役も会計専門家や法律専門家などを識別した。分析の結果、不祥事後には社外取締役の比重が高まるという関係が確認された。取締役会改革は信頼回復に向けた不祥事企業からのシグナルといえる。 また、取締役会特性が企業不祥事の発生確率に与える影響に関しては、分析対象を絞ることで、最終的には学術論文を完成させることができた。企業不祥事は、粉飾決算、実験データの改竄、賞味期限や産地の偽装、製品リコール、工場火災など多岐にわたる。そこで、分析の対象を、粉飾決算などの会計不正に限定して分析を進めた。他方、企業のガバナンス特性に関しては、取締役会特性だけではなく、ストック・オプションなどの経営者インセンティブと所有構造の影響も検証した。研究の成果は、学術論文「企業統治と会計不正-企業のガバナンス改革は有効か?-」にて公表した。分析の結果、企業のガバナンスは会計不正に影響していることが示された。第一に、経営に対するモニタリングの強化を図るというガバナンス改革の方向性は間違いではない。第二に、経営者インセンティブの強化は、不正防止に一定の効果をもつが、会計不正を誘発するリスクも併せもつため注意が必要である。第三に、外国人株主や機関投資家は、粉飾決算を抑止する効果をもつ一方、過度の利益圧力を与えている可能性もある。他方、安定株主の持株比率が高いほど会計不正の発生確率が低いという明確な関係も確認できた。 なお、主な研究実績は、学会報告等3回、シンポジウム講演1回、学術論文2編である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、取締役会特性と企業不祥事との間の双方向の因果関係を定量的に検証することであった。現在、ほぼ予定通りに研究目的を達成できている。具体的には、関連する先行研究のレビュー、検証する仮説の設定、統計分析に必要なデータベースの構築、推計モデルの定式化と推計、推計結果の解釈、研究成果をまとめた論文の執筆と公表まで、研究を概ね順調に遂行することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度は、研究成果を学会・シンポジウム・研究会等で報告し、参加者からのフィードバックを得るとともに、最終的には学術論文2本を完成させることができた。今後は、研究成果の社会的還元が重要な課題になると認識している。そこで、大学のウェブサイトや各種の研究会などで、研究成果の要約やインプリケーションを中心に情報発信することに注力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学生アルバイトが就職活動によって予定した時間勤務できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究は概ね順調に推移し、最終的には学術論文として公表することが出来た。今年度は、研究成果の要約などを大学のウェブサイトや研究会などで公表するなど、情報発信に注力したい。
|