研究課題/領域番号 |
26380475
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中野 冠 慶應義塾大学, システムデザイン・マネジメント研究科, 教授 (10394454)
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研究分担者 |
湊 宣明 慶應義塾大学, システムデザイン・マネジメント研究科, 准教授 (30567756)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | データベース / 要求分析 / 国際情報交換(スイス) |
研究実績の概要 |
1.サプライチェーンマネジメント(以下SCM)関連企業における教育課題の抽出:食品製造企業を訪問し、生産システム、物流システムの視察を実施した。また、SCMの責任者を対象とした教育研修を慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて開催し、教育ニーズの把握とともに、実務レベルにおける課題、及び現場レベルでの対応策について情報収集を行った。その他、自動車組み立て会社、自動車部品会社、電子部品製造会社の関係者と教育ゲームに関してヒアリングを行ない、課題抽出・整理・要求分析を行った。 2.サプライチェーンマネジメントゲームの調査・分類とデータベース化: ・文献調査、国際ゲーミング・シミュレーション学会(ISAGA2015)および日本シミュレーション&ゲーミング学会参加などによって、100以上の SCM教育ゲームを調査し、データベースのプロトタイプを構築した。また、市場メカニズムを取り入れながらデータベースを拡張させるための検討をスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)と共同で実施し、2015年3月に開催されたCOINs2015において研究発表を行った。 ・持続可能なサプライチェーンゲームについて、持続可能性の3軸に対応したリーンゲーム(経済性)、グリーンゲーム(環境性)、リスク回避ゲーム(社会性)論文調査を行った。SCMを対象としてグリーンゲームやリスク回避ゲームは近年ほとんど発表されていないことがわかった。その結果を経営工学会の主催する国際シンポジウムで発表した。 3.サプライチェーンのリスク回避シナリオ検討:大規模な自然災害や金融危機などサプライチェーンの突発的破壊リスクに対して、サプライチェーンの振る舞いをモデル化してシミュレーションを行うことによって、ゲームシナリオを検討した。サプライチェーンリスクのモデル化について、国内外の学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、企業や大学においてサプライチェーンを学習するためのSCM教育ゲームとして、持続可能性の3軸に対応したリーンゲーム(経済性)、グリーンゲーム(環境性)、リスク回避ゲーム(社会性)を統合的に提供することである。 SCM関連企業および慶應義塾大学学生に対して、従来から知られているSCMリーンゲームを複数行った結果、チームワークを醸成する教育ゲームの構築に対してニーズが高く、また教育効果が高いことがわかった。グリーンゲーム、リスク回避ゲームの要求仕様として取り入れることにした。 一方、文献調査などによって教育ゲームのデータベースを作成した結果、SCMの分野における環境ゲームやリスク回避ゲームは稀であることがわかった。この理由を検討した結果、経済性と環境性の貨幣価値バランスを取ることの困難さと、ゲーム中にリスク突発事象を頻繁に起こすと非現実的であるという問題によると考えられる。現実性を保ち、チームの想像力を育成するような教育ゲームの構築が求められることがわかった。 この問題について、平成26年度は、環境性とリスク耐性を貨幣価値に置き換える研究を行った。特に大規模な自然災害や金融危機などの突発的破壊事象に対するシナリオ分析を数学モデルとシミュレーションによって確認した。また、システムエンジニアリングの手法を用いて、体系的に要求仕様を満たすビジネスゲームの構築を行うための方法論の研究も進めている。研究成果としては平成27年度に国際学会発表や論文誌投稿を行う予定である。この点は、平成27年度研究計画を、少し時期を早めて実施していることになる。 以上から、研究進捗は概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.持続可能性評価指標開発 :平成27年度前半は、環境性能を貨幣価値に置き換えるため、企業コストだけではなく社会コストを計算するための指標を開発する。地球温暖化に関わる排出権取引、欧州のエネルギー税、廃棄物処理社会コスト、ブランド効果などを調査した上で、より現実に即した指標を開発する。リスク耐性については、過去の金融危機や地震・洪水などの長期的影響を貨幣価値に置き換える研究を行う。 2.教育ゲームプロトタイプ開発:平成27年度後半は、平成26年度で開発した教育ゲームデータベースから重要なものを選び、環境性や社会性を高めるための既存方策を調査してゲームの有効なシナリオを開発する。さらに、持続可能性の3軸に対応したリーンゲーム(経済性)、グリーンゲーム(環境性)、リスク回避ゲーム(社会性)のプロトタイプを開発する予定である。当初はより楽しく学べるボードゲームを開発する予定であったが、ゲームの実行に時間がかかる可能性があるため、コンピュータで計算を支援するゲームにすることも考慮する。 3.教育ゲームの試行評価と改善:平成28年度は、教育ゲームを試行しながら継続的に改善を行う。国籍、実務経験、学術的なバックグラウンドが異なる実験群を編成し、ゲーム適用実験を行い、属性の違いによるプレイヤーの振る舞い、結果の比較検証を行う。研究代表者の研究室には国籍の異なる多数の留学生が所属し、また、企業勤務者も数多く所属するため、多様なバックグラウンドを持つ学生を対象に実験を容易に行うことができ、ユーザーからのフィードバックを受けて、ゲームを改善していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗により、当初予定していた論文投稿や国際学会での発表を平成27年度に複数行うことが可能になった。そのため、平成27年度掲載料、会議登録料、旅費が当初計画より多く必要になることがわかった。 そこで、平成26年度計画のうち、MITなど海外大学ととの情報交換を割愛した。そのかわり、慶應義塾の内部予算でMITの研究者を招聘して情報交換を行ったので、進捗上の遅れはない。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り、国内の企業訪問旅費、資料整理のバイト、国際学会の旅費(1回・一人の計画)に使用する予定であるが、上記で述べたように、繰り越した助成金は追加の論文投稿や国際学会発表における、論文掲載料、英文校正費、会議登録料、旅費にあてる予定である。
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