研究課題/領域番号 |
26380481
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
首藤 惠 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (10206568)
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研究分担者 |
竹原 均 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70261782)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CSR / CSP / 資本コスト / 銀行依存度 / 機関投資家所有 / 信用リスク / 倒産確率 |
研究実績の概要 |
(1)Effects of Corporate Social Performance on Default Risk: Structural Model-Based Analysis: 本研究の目的は、corporate social performance (CSP) がどのよう企業の倒産リスク (PD)と関連しているかを、Merton (1974)のリスク構造モデルを用いて検証することにある。CSPは金融制約を受けない大企業のPDと正の関係をもつが、強い金融制約のもとにある小規模企業経営者は、CSPの改善によって倒産確率と負債コストを低下させようとCSR活動を積極的に行っていることが示唆される。 (2)Corporate Social Responsibility and the Cost of Capital: Evidence from Japanese Firms:本研究の目的は、株式市場における情報の非対称性のもとで所有構造と銀行関係がagency costに与える影響を明示的に配慮して、CSPと資本コスト(cost of equity, cost of debt, WACC)との関係を検証することである。2007-2013年の全観察期間に加えて、グローバル危機前後の2期間に分け、日本の金融システムの構造変化がCSR活動と資本コストの関係に及ぼす影響を分析した。機関投資家にとってCSPは有用な情報と受け取られている一方、銀行はむしろコストとみなしていること、グローバル金融危機を含む前期については、CSPと負債コストとは有意な正の関係が、後期については、CSPと株式コストについて強い負の関係が検出され、金融危機の後、機関投資家行動の企業への影響力が高まっていることが示唆される。 (3)実証研究と並行して、コーポレートガバナンスとステークホルダー関係について理論的な整理と概念整理について小論をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、企業のCSR活動が持続性, 成長性を含めた企業経営の実体に及ぼす長期的影響についてであり、資本コスト, 財務リスク, 財務制約といった企業特性に与える影響を実証的に分析することである。本年度は、昨年度から発展させた3つの研究のpublicationを確定し、研究責任者4回の学会報告(国内1回、海外3回)、共同研究者2回(海外)を行った。新たに、企業が直面する倒産リスクと資本コストに焦点を当てた2つの研究を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度後半は、CSPと資本コストの研究に注力し論文にまとめたので、2016年度前半は学会報告を重ねてアドバイスやコメントに応え、最終論文にしてpuboliationをする予定である。すでに、3つの学会の審査を経て、「報告確定」している。 さらに、今年度末から、銀行業にも分析対象を広げて、銀行の流動性リスク管理とCSPとの関連を、trading risk とliquidity funding riskの2つの側面から分析する新たな研究に着手した。海外研究者との協働を得て分析枠組みと予備的検証を始めた。2016年度は分析を精緻化・発展させて、共同研究Corporate Social Performance and Liquidity Risk: Japanese Banksとしてまとめる予定である。
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