本研究は4カ年計画で実施された。最終年度に当たる平成29年度の研究概要は、 以下の3点である。 第1に、組織や地域社会の災害に対するレジリエンスに関する議論を取り上げ、その構図と課題について考察した。特に、これまでの災害レジリエンスに関する議論には、災害による被害そのものの低減、復旧活動の開始の早期化、復旧活動自体の効率化が、災害レジリエンスを構築する要素として存在することを指摘した。また、災害レジリエンスを高める方向性として、事前の計画に基づく計画ベースアプローチと、利用可能な資源を効果的に活用する資源ベースアプローチの2つが存在することに言及した。しかし、課題として、計画を重視するあまり、活用できる資源を見落とす可能性について指摘した。この研究成果は、学術論文として発表した。 第2に、地域防災におけるリスクマネジメント教育に関する先行研究のサーベイと情報収集を行い、1)災害時において活用できる能力は,日常から当たり前のように使用している能力である、2)災害以降の分析だけではなく災害前の日常時の分析が重要となる、という観点から事例研究を行った。特に、東日本大震災時に展開されたキャッシュフォーワーク事業を取り上げ、災害時において活用できる能力は,日常から当たり前のように使用している能力であることを指摘した。この研究成果は、国際会議において学会報告として発表した。 第3に、地域防災におけるリスクマネジメント教育に関する学術シンポジウムの参加を通じて、地域防災やリスクマネジメント教育に関する最新の情報を収集し、本研究の視点および枠組みを精緻化したことである。それらは、特に、レジリエンス構築における計画ベースアプローチと資源ベースアプローチの区別や、日常時における活動という観点からの事例分析において反映されている。
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