研究課題/領域番号 |
26380492
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
西岡 健一 関西大学, 商学部, 准教授 (40553897)
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研究分担者 |
南 知惠子 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90254234)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サービス・イノベーション / ICT / サービタイゼーション / サービス・オペレーションズ |
研究実績の概要 |
研究計画時に設定した課題に即して、以下の4テーマに分けて研究実績の概要を示す。 (1)製造業のサービス化アプローチにおいて、センサー技術とICTの関連に着目し研究を行った。そしてICTの技術的要素と製造業のサービス化を促進するかの要因の関係について、事例研究を進めた。その成果は国際学会での発表、更に研究を進め2016年度も国際学会(Euroma2016)での発表が決まっている。 (2)ICT技術の発展に伴い大きくビジネス環境が変化していきているが、ICTのどのような役割が今後ビジネスを大きく変えていくか、その技術的要因を探ることをテーマとして研究を行った。2015年度は主に文献と企業ヒアリングにより、その概念定義と研究課題の抽出に注力して研究活動を行い、国内雑誌に研究成果を論文としてまとめた。 (3)新しいサービスや技術へ顧客の反応を積極的にし、それらを受容させる要因の研究は、実践的にその重要性は一層高まっている。ICT技術の発展とともに、これまで以上に人と技術との関わりが重要となってくる。すなわち未知の技術に対するユーザの態度と反応に対する定量的な評価と新しいフレームワークの開発が求められている。本年度は2012年度に取得したスーパーのレジ待ちに関する消費者調査データを用い、消費者の心理的要因と技術に対する受容性がどのようにレジ待ちサービスに関する価値認識へ結びつくのか、その関係について論文を作成した。その結果、海外査読雑誌への掲載が決まった(掲載は2016年度)。 (4)サービス・サプライチェーンについて、主にブライダル産業を研究テーマに進めているが、平成27年度は精力的に多様な企業にインタビューを行い、理論フレームワークを作り上げることができた。結果は発表論文に、そして2016年度に共著論文で発刊され、さらに国際学会(Euroma2016)での共同発表が決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は科学研究費プロジェクト二年目にあたり、初年度に設定した研究課題に対して、課題の精緻化・理論化を図りつつ、具体的な調査設計を行うことが目的となっていた。特に注力したのが事例研究を中心に理論仮説の構築を行ってきたことである。事例研究においては、従来素材メーカと小売業に着目して事例研究を行ってきたが、より一般的な理論構築を行うために、製造業、サービス産業全般に対して定性的なデータ収集を行ってきた。 次に平成27年度の具体的な進捗を見てみると、(1)ビジネスのサービス化における技術開発部門の役割、(2)ビジネスのサービス化におけるICT技術の新たな役割、(3)サービス業におけるサービス・オペレーションの理論研究、について先に示すように基礎的な研究実績を蓄積してきている。特に新たな事例を開発し、新たな研究分野を開発できたことは、平成28年度の研究は計画以上であったと言える。一方、査読雑誌への投稿は2件行ったものの、掲載決定は1件であり、残りは平成28年度に持ち越しているが、査読雑誌以外には単著・共著含めて成果を出すことができ、研究成果という点では順調であると判断する。 一方、進捗が遅れているのは定量調査の実施である。そして、平成27年度後半からは、次の段階として、開発した分析枠組みにおける、構成概念間同士の検証を行うため、定量的データを収集し、統計解析による実証研究を行うこととしていた。これは当初平成27年度後半(2月)に行う予定であったが、研究の進捗により、研究テーマが発展したことが大きな理由であるものの、平成28年度に調査を延期することとなっている。しかしながら基礎的な理論抽出と調査項目の選定及び調査対象企業の範囲などは既に検討を進めているため、大幅に計画が遅れているとは考えない。 以上を含めると平成27年度の研究経過進捗は、おおむね順調に推移していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究体制については大きな変更はない。研究計画も当初計画との差分は、平成27年度実施予定の製造業におけるビジネスサービス化についての質問紙調査を平成28年に実施期間を変更する予定のみである。対象企業の複数部門への質問紙調査を実施するとともに、市販の小売企業のデータベース等からのデータ収集とデータベース化を行う。そして、これらの収集されたデータに基づき、構築された仮説の検証を行う。研究蓄積の少ない分野であるために、事例収集と分析による理論構築作業は研究期間全体を通して行われる。平成28年度は研究期間三年目となるために、研究成果の具体的なアウトプットを関係者とともに進めていきたい。これは国際学会での発表だけではなく、国内に対しても研究成果をより実践的な知見になるように、成果のまとめ方を工夫することを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度実施予定の主に製造業を調査対象とした質問紙調査の実施を平成28年度へ延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の繰り越し分は、質問紙調査を実施するために利用する。28年度の配分額は、国際学会出席・調査のための外国出張、調査を主目的とした国内出張、及び質問紙調査を行うためのその他(業務委託費)に利用する。
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