研究課題/領域番号 |
26380504
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
早乙女 周子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00447963)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオベンチャー / 特許 / 創薬 / 知的財産 |
研究実績の概要 |
本研究は、米国バイオベンチャーの年次報告書及び特許明細書を調査することにより、バイオベンチャーの成功要因を明らかにすることである。 我々はこれまでに、1990年から1995年に設立された創薬バイオベンチャー123社の特許出願と2012年9月時点での経営状況(Exit)を調査し、倒産したグループは年間パテントファミリー数が他のグループに比べて有意に少なく、大手製薬企業(Big Pharma)に買収(M&A)されたグループは他のグループに比べて年間パテントファミリー数が有意に多いことを見出している。 平成26年度は、両グループの開発品目数及び開発段階の調査を行った。倒産グループの平均は2.3個、M&A(Big Pharma)のそれは6.1個であり、M&A (Big Pharma)グループの方が多かった。しかし、両グループにおいて年間パテントファミリー数との相関は見られなかった。 更に、倒産グループ全社とM&A(Big Pharma)グループのうち9社の特許請求項の分析を行った。その結果、両グループ共に「治療方法」に関する請求項が最も多く占めていた。医薬品の権利保護に最も重要な「医薬物質」の請求項は、M&A(Big Pharma)グループの方が倒産グループより多かった。更にM&A(Big Pharma)グループではスクリーニング方法や標的に関する請求項も比較的多かった。以上のことから、M&A(Big Pharma)グループは、医薬品開発の上流(標的探索、スクリーニング方法の開発)から行い、自ら医薬候補品となる「医薬物質」を見出し、更に様々な「治療用途」を開発していたために、年間の特許出願数が多くなったと考えられる。更に、独自開発の医薬候補品を保有しているバイオベンチャーだったことが、大手製薬企業に買収されるという結果につながったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、H25年度までに作成した米国バイオベンチャーのデータベースを元に行っており研究計画も実際に可能な範囲で作成した。平成26年度はベンチャーのデータベースに基づき、計画通り、各企業の年次報告書、特許文献に基づき分析を行った。M&A(Big Pharma)グループは特許出願数が多く、1000件以上出願しているベンチャーが2社あったため、分析に時間を要しているが、分析方法は既に確立されており問題なく研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進んでおり、倒産企業とM&A(Big Pharma)において請求項の内容の差から研究内容に違いがあったことを明らかにした。しかし、分析する書類が多く分析を加速化する必要がある。まずは大学院生などの協力者を集め、研究を進める。さらに分析ツール等を検討し、より分析を速く進める努力を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
特許請求項の分析のためアルバイト1名を雇用したが、予定よりも勤務時間が短かったため、人件費が計画より安くなった。そのため若干の余剰が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の余剰金については、平成27年度の特許請求項分析のアルバイトの人件費として使用する予定である。
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