研究課題/領域番号 |
26380505
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
勝本 雅和 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90272674)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 知的生産 / 産業集積 / 意匠分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで整備されて来なかった地域イノベーションシステム分析のための基本データを作成するため、近年、重要視されているデザインに関連して、意匠の書誌データを用いたデザイン生産マップを作成することである。 平成26年度はデザイン生産マップの作成方法を開発するフェイズである。この作成方法に関しては、基本的には特許の書誌データを用いた知的生産マップと同様の方法を採るが、特 許と意匠では異なる点に関して修正する必要がある。 その最大の点が意匠の評価方法の確立である。特許の評価に関しては多くの先行研究があり、特許の質はマクロ的には被引用数と相関があることが示されている。しかし、意匠に関しては、まだどのような指標が質を表すのか明確ではなかった。そこで、(1)2つの品目について、グッドデザイン賞受賞作品の意匠とそれ以外の意匠について被引用数等の指標に差が生ずるのかを検証した。また(2)上場企業100社について、その業績と意匠数、意匠の被引用数等の指標との関係を検証した。 以上の結果、意匠のマクロ的価値はその被引用数との相関が高いことが明らかとなり、特許を用いた知的生産マップと同様に、デザイン生産マップにおいても意匠の被引用数を指標として用いることの有効性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はデザイン生産マップの作成方法を開発するフェイズである。「研究実績の概要」にも述べたが、本デザイン生産マップ作成にあたっては、先行して実施した特許の書誌データに基づく知的生産マップを応用することとした。先行研究で特許の質(経済的価値等)は非常に大きなばらつきがあることが明らかとなっており、特許を用いた分析にはその質も考慮すべきことが示されている。特許の質の評価法の一つとしてその被引用数を用いる方法がある。この被引用数という指標が意匠の質を測る上で有効かどうかを検証し、有効であるとの結論を得た。また、以上の検証過程において、当初の予定通りに上場企業100社の意匠および業績データの収集を行った。 以上より、デザイン生産マップ作成準備はほぼ整ったと言える。 但し、作成方法の開発に時間を取られた結果、同時に実施することとしていたデザイン生産マップ作成の試行に関しては、自動化のためのプログラムの作成は実施したものの、実装作業はまだ行えておらず、若干の遅れを生じていることを付記する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に開発したデザイン生産マップの作成方法に基づき、意匠の被引用数をベースとしたデザイン生産マップを作成するフェイズである。 第一に、デザイン生産マップの作成のためのデータ収集を行う。平成26年度に構築したデザイン生産マップの作成方法に基づき、創作者住所を本社で管理している会社の意匠の創作者を事業所毎に分配するために必要なデータを収集する。上場企業については、基本的には有価証券報告書に基づくが、非上場企業についてはホームページの記載や事業活動の立地に関する資料等によって情報収集を行う。 第二に、デザイン生産マップの作成を行う。平成26年度に構築したデザイン生産マップの作成方法と収集したデータに基づいてデザイン生産マップを作成する(現時点の予定では前年分を含めて約1,000社:総出願数の概ね9割と推定)。デザイン生産マップ作成において最も時間と労力を要する作業は、創作者の住所が必ずしもデザインを実際に行った住所とは同じではないと考えられるため、他のデータベースとの照合等により、実際の生産地を推計する点にある。既に自動化のためのブログラムは昨年度既に作成しており、平成27年度はそれをデータサーバーに実装し、デザイン生産マップの作成を高速化する予定である。 第三に、デザイン生産の空間集積効果の分析を行う。作成したデザイン生産マップに基づき、各地区の持つ属性(地理的、社会的、文化的、経済的)とデザイン生産の空間的集積との関連について分析を行う。また地域内の大学や公的研究機関の影響についても評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」の欄でも述べた通り、昨年度はデザイン生産マップの作成方法の開発に集中したことから、意匠データベースと他のデータベースとの創作者の照合による創作者住所の自動推定プログラムをデータサーバーへの実装を行うことができなかった。これらの作業を次年度に先延ばしすることとしたために、データサーバーの購入費用および実装作業のための人件費が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
これらについては予定通り、平成27年度にデータサーバーの購入およびプログラムの実装作業のために使用することを予定している。
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