本研究の目的は、これまで整備されて来なかったデザイン生産に関する基本データを作成するため、意匠の書誌データを用いたデザイン生産マップを作成し、組織やネットワークのデザイン生産への影響を分析することである。 平成28年度は、助成事業の最終年度として、平成26-27年度に作成したデザイン生産マップに基づいて、組織やネットワークのデザイン生産に及ぼす影響について分析を行った。具体的には、内外の上場企業33社に対象を絞って、まず企業内のデザイン組織について分析を行った。その結果、①エースデザイナーへの依存度が企業によって異なる。②内部デザーナーの方が外部デザイナーよりも共同創作活動が多い。③外資系企業は日本企業と比べると外部デザイナーへの依存度が低い。④外資系企業は日本企業と比較すると共同での創作活動が多い。ということが明らかとなった。また平成26-27年度の研究で開発したデザイン活動のパフォーマンスに関する指標、創作した意匠権あたりの被引用数を用いた分析を行った。その結果、⑤外部デザイナーの方が内部デザイナーよりも経済的価値の高いデザインを創作している。⑥デザイン活動が相対的に低調な企業の方が創作した意匠権の経済的価値が高い。ということが明らかとなった。このことはデザイン活動が活発な企業は総体としてのデザイン資産の経済的価値は大きいが、デザイン活動が低調な企業と比較するとデザイン活動の効率が低いということを示唆している。 今後は創作者の住所地に関するデータを活かして地域イノベーションシステムとの関連についてさらに分析を進めることが必要である。
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