研究課題/領域番号 |
26380514
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西村 孝史 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (40508462)
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研究分担者 |
西岡 由美 立正大学, 経営学部, 准教授 (30369467)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソーシャル・キャピタル / 戦略人材マネジメント / 適合性 / 柔軟性 / 異動 / 社会ネットワーク |
研究実績の概要 |
平成26年度は,既存のデータセットを用いて論文を3本作成した。1本目は,従来の社会ネットワークからソーシャル・キャピタルを捉えるのではなく,資源の観点から企業内のソーシャル・キャピタルを捉えなおすことを提示している。具体的には,紐帯の数や密度といった構造的な性質からソーシャル・キャピタルを捉えるのではなく,関係性の中からやり取りされる資源の観点から分析を行った。この論文では,ソーシャル・キャピタルを資源動員/獲得,職場支援,情報共有の3つの下位要素から成り立つ概念として捉え,下位要素の組み合わせや階層性に注目することで新たな研究可能性を指摘している。 2本目は,ソーシャル・キャピタルの形成に重要な役割を果たすと思われるミドルマネージャに関する論文であり,ミドルの役割を組織管理・部下育成・情報伝達・例外対応の4つに分類し,これらがどのような関係性を持ち,何に基づいて形成されるのかを論じた論文である。この論文については経営行動科学学会で発表も行っている。 3本目は,人材マネジメントの分権化と人的資本の柔軟性に関する論文である。この論文では,採用・配置・処遇の3つの人事機能のうち,配置機能の分権化が組織全体にとって不利益を引き起こす可能性があることが明らかにしている。また,人的資本の柔軟性を高めることがこうした組織全体の不利益を抑制すると同時に配置の分権化が部分媒介していることを明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの点からおおむね順調であると言える。 第1に,ソーシャル・キャピタル研究の知見に基づいて,ワーキングペーパーを発表し,その内容について学会発表を1回実施したこと。第2に,ソーシャル・キャピタルに関わる調査として個人調査を実施したことである。この調査は,同じ対象者に3年にわたり3時点で尋ねた横断的な個人調査であり,ソーシャル・キャピタルの規定要因としての個人要因の特定がなされつつあることから本研究課題とあわせてさらなる研究の進展可能性が見えたからである。第3に,ソーシャル・キャピタルならびに戦略人材マネジメントについて体系的なレビューを行ったことで平成27年度以降の調査の下準備が整ったからである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究実績は,いずれも個人のソーシャル・キャピタルの注目した研究であり,組織力としてのソーシャル・キャピタルに関する研究ではない。そこで平成27年度は,この問題意識の下に質問票調査を作成および実施し,企業内における組織レベルのソーシャル・キャピタルを捉えることで,組織の持つソーシャル・キャピタルが組織パフォーマンスにいかなる成果をもたらすのかを実証分析する予定である。可能であれば,個人のソーシャル・キャピタルと組織としてのソーシャル・キャピタルの交互作用やダイナミクスを捉えた研究に昇華させたいと考えている。 特に戦略人材マネジメント研究では,人材マネジメントが組織成果に与える影響として人的資本と組織資本(=ソーシャル・キャピタル)を媒介することがメタ分析により明らかになりつつあり,人材マネジメントを独立変数としたときに,人的資本とソーシャル・キャピタルを媒介変数として組織成果に与えるモデルを理論的にも,実証的にも明らかにしたい。 また,年度をまたいでしまうものの,ソーシャル・キャピタルに関する研究発表を組織学会と日本労務学会で行う予定である。この2本の学会発表については,平成26年度内にエントリーを済ませ,平成27年度に報告が確定している。また,戦略人材マネジメントに関するレビュー論文についても完成しており,学術誌に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外学会への参加が,学内の用務と重なりいけなくなった。平成27年度は,別の海外学会へも参加を予定していため,そちらの学会参加のための渡航費用に充当したものの,当初の参加予定の学会が北米であったのに対して,別の学会がアジア地域であっため,計画していた予算をズレが生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降に3時点で尋ねた調査データをより詳細に分析したいと考えているため,統計ソフトの購入に使用予定である。
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