2016年度は、企業再生M&Aのスポンサー企業のケイパビリティ移転に関して、主に以下4つの方向で研究を進め、アウトプットを得ている。 まず第1に、これまでの研究成果を事例ケース2本にまとめた。2本のケースとは「カネボウ」および「JAL」の企業再生M&Aに関するケースである。2本のケースは、慶應ビジネススクールのエグゼクティブMBA対象科目「企業再生における戦略イノベーション(16回、芦澤担当)」の中で配布し、実務経験豊富な受講生とのディスカッションから、研究面でのブラッシュアップにつながる論点抽出に至っている。ここでの主な発見事項は、企業再生の進捗フェーズによって、必要なケイパビリティが異なることである。 第2に、企業再生M&Aのスポンサーの中でも、近年その存在感を強くしている、プライベートエクイティファンド(PEファンド)の果たす役割について、複数の関係者へのインタビューを実施し、論点を整理するに至った。PEファンドは、性質上非公開性が強く、その役割についてこれまで明らかにされてこなかったものであり、その研究上の意義は大きい。これについては、1年内のジャーナル等への投稿をもって公表するよう進めている。 第3に、企業再生再生スポンサー企業のケイパビリティの役割について、約100件の案件を対象に、統計的に実証研究を進めた。これについては投稿論文としてまとめて、ジャーナルに投稿中である。 第4に、企業再生M&A組成時の再生計画の妥当性について、実務的問題提起を含む論文を作成して、書籍の1章にまとめた(共著)。これについては2017年8月に出版予定となっている。
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