本基盤研究(C)で作成した「変革型人材に関する質問票調査」を6社の協力のもと実施。236の回答が得られた。うち5社については代表取締役、1社については部長クラスを通じて必要枚数を確認し、郵送または電子データでのやり取りを行った。電子データ分を100%とすれば、全体の回収率は92.91%であった。本調査は、「変革指向の内容と程度」、「変革に向かい駆動要因」、「形成されたマネジメント能力」、「幼少期・学生時代・社会人時代の経験(人材育成経路)」の関係解明を目指すものである。回答者の構成は、一般社員38.6%、管理職初級クラス27.0%、課長クラス以上34.3%であった。課長クラス以上のうち、役員と部長クラスを合わせ27名(11.6%)であった。 こうしたデータベースから、第1に「職位の上昇とともに、変革の必要性の認識レベルが上がる傾向」が確認された。第2に「価値観形成とそれに基づく影響力に係るマネジメント能力が、変革の必要性の認識レベルに関わる可能性」が確認された。第3に「価値観形成とそれに基づく影響力に係るマネジメント能力については、社内の反対や抵抗を乗り越えること、そして、上層部のそばで仕事を経験することとを通じて認識・構築される可能性」が確認された。同時に、「価値観形成とそれに基づく影響力に係るマネジメント能力は、構想力というマネジメント能力とも密接であること」が暗示された。第4に「周囲からの期待が、変革の必要性の認識レベルと関わっている可能性」が確認された。 以上の議論を重ね合わせ、「経営上層部の影響を受け、仕事上、社内の反対や抵抗を乗り越え、自分の価値観を鍛錬した人材は、構想力や影響力を持つに至る。同時に、社内の職位を上げる過程で周囲の期待を背負う。結果、自社に対する変革の必要性認識に敏感になっていく」という姿が仮説的に浮上した。
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