研究課題/領域番号 |
26380523
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
澤田 直宏 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (00457847)
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研究分担者 |
浅川 和宏 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (50276424)
中村 洋 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (60286656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オープン・イノベーション / 制度的環境 / 先進国 / 新興国 |
研究実績の概要 |
東証上場企業を対象にしたアンケートおよび公開データを基に,日系企業によるオープン化政策の実施状況および研究開発パフォーマンスを測定した.アンケートでは国内拠点だけではなく,先進国および新興国の拠点における状況についても回答頂いた. 結論的には以下のとおりである.全拠点(国内・先進国・新興国)において交流先の多さは研究開発パフォーマンスにプラスの影響を与えていた.国内拠点の場合,交流先企業に対する株式保有が研究開発パフォーマンスの向上に統計的に影響を与えなかった.しかしながら,先進国・新興国ともに交流先企業への株式保有が研究開発パフォーマンスにプラスの影響を与えていた.さらに,交流先の多さと株式保有との交互作用効果はマイナスの影響を与えていた. 結果に対する解釈は以下のとおりである.交流先の多さは様々な知識の交換を可能にするため研究開発に対してプラスの影響を与える. 制度的環境の相違を勘案した場合,国内拠点では交流先との間で旧来から様々な取引実施されているため,交流先に対する情報の非対称性が少なく,かつ,交流先も取引継続の必要性から機会主義的行動へのインセンティブが乏しい.結果として,株式取得といったコストのかかる取引先に対するガバナンス体制を導入する必要性が乏しくなる.しかしながら制度的環境が異なる先進国・新興国においては,情報の非対称性や機会主義への脅威があるため,知的財産権保護の観点から株式取得による交流先のガバナンスを行うことが研究開発パフォーマンスにプラスの影響を与える.但し,数多くの交流先に対して株式取得をすれば交流先維持に対するコストは高くなるため,研究開発パフォーマンスに対してマイナスの影響を与える. 本研究は制度的環境と交流維持コストの観点から最適なオープン化の範囲があることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
東証1部上場企業のうち研究開発への支出が多い鉱工業および情報通信企業に対してアンケート調査を行ったものの,回答数が少なかったため,その後2度にわたり追加アンケートを実施した.これによりサンプル数を246社まで拡大した. しかしながら,十分なサンプル数を確保するのに時間がかかり,公開データ(財務・特許データ)を含めたデータベースの整備が完了したのが2016年中盤であったため,年度内での統計分析および論文執筆に時間が確保できなかった.結果として,年度内での論文発表および論文投稿には至らなかった. 但し,年度内に論文投稿を行い,次年度中に発表が確定している論文が3本ある.
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり,既にデータベースが完成しているため,追加の統計分析を実施するとともに,投稿に向けて論文の執筆を行う.既に2017年度に3本の論文発表を実施予定であるため,発表の際のコメントを基に論文の改定を行い,年度内に論文を投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のとおり,アンケートの回収率が低かったため追加アンケートを実施したことで統計分析および論文執筆のタイミングが遅れたため,昨年度中に論文発表を行うことができなかった.これに伴い国内・海外渡航費等の支出予定が遅延した.
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次年度使用額の使用計画 |
上述のとおり,既に今年度中での国際学会での発表が確定している.うち2件は米国での開催であるため,研究費はほぼすべて米国への渡航費および宿泊費に充当する予定である.
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