研究課題/領域番号 |
26380524
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
森田 道也 学習院大学, 経済学部, 教授 (10095490)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サプライチェーン戦略 / 事業戦略 / 戦略的適合 / 製品特性 / 絶対的サプライチェーン戦略指向 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、研究課題の遂行に必要な以下の3つの課題で以下のような進展をみた。 1.絶対的サプライチェーン戦略の理論的枠組みと仮説構築:サプライチェーン(SC)の分野で著名なLittleの法則を基礎に絶対的SC指向性戦略概念を提示した。リードタイム短縮、ジャストインタイム補充、適合品質改善、そして需要の安定性確保に焦点づけたSC戦略の概念である。これらを継続的改善の対象にすることを指向した戦略である。この戦略指向性は現在グローバルな視点からも優良企業とされるトヨタ自動車、スペインのインディテックス社(その1事業部がザラ)、そしてアップル社の経営なども参考に導いた。これは学会で発表した。 2.絶対的SC指向性戦略の有意性の検証:この指向性の強い企業が優れた業績を上げているということでその戦略の有意性を示した。分析結果として、確かにそのこと有意的に認めることができ、その指向性の強い企業は事業戦略と製造戦略の連動性が高く、事業戦略展開でも製造プロセスの重要性をより認識することもわかった。また、職能横断的製品開発が顕著な企業はこの指向性も高いことの知見も得た。この一連の成果はInternational Journal of Production Economics誌で刊行された。この成果は戦略的適合性との関連性を強く示唆している。 3.データベース構築: 平成23年度より企画した国際共同研究による10カ国共同調査が一応のめどが立ち、データベース(DB)構築中である。分析可能なDBは最後のデータの問題を解消する最終段階に入っている。日本は22社の調査データをそのDBに入れた。2015年6月頃から本DBの使用可能になる。データ収集協力企業への現段階でのデータを用いた他社比較の報告は全社郵送で終了した。直接訪問による討議は数社に関して済ませているが、今後の継続を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の達成度はおおむね予定していた内容のことを達成できた。実績報告でも述べた通り、研究テーマである絶対的サプライチェーン指向性戦略(指向性という命名はInternational Journal of Production Economics誌への掲載の際に、査読者より示唆されて付加した。経営風土としての意味合いを当該絶対的サプライチェーン戦略は持っているのでその示唆を適当と判断し、指向性という言葉を付加した。当誌ではこの概念をASCOSという略称で定義しているので以後もASCOSを使う)の概念定義と意義についてはその実証分析を通じて学術研究上で受容されたと考えている。それゆえ、今後はASCOSと戦略的適合の関わり合いにより焦点を置いた研究ができる体制になったと理解している。その意味では達成度は計画に比して100%に近いものと評価できる。 平成26年度において、あと1つの達成すべきことは、国際共同研究のデータベースを完成させることであったが、1,2の国を除いてそれは達成できたと判断している。今後の研究に用いる体制はできあがった。最終的なデータのチェック、特に数値データの整合性や記入ミス(桁数とか円などの単位の不揃い)をおこなう過程に入っている。現段階では当初の計画に比して達成度はほぼ100%になっていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究内容は、絶対的サプライチェーン指向性戦略(略してASCOS)を戦略的適合という従来からあったがまだ理論的に確立していない研究課題に適用して戦略的適合の意味合いをより実践的にもわかりやすいものとすることにすることである。まず1つの研究方向は、ASCOSが持つ特徴、すなわち企業のオペレーションにより焦点を置いた概念であることから派生する事業戦略への負のインパクトがありうるという懸念を払拭することがある。ASCOSが戦略的適合をもたらすという本研究課題における基本的仮説からうえば、このことは非常に重要である。ポーターが「オペレーションは戦略ではない」という主張をしているし、スキナーは「Mill-stone効果」という概念でオペレーション・システムの経営における鈍重性を述べているが、これらは感覚的にオペレーションに重点を置くことの危険性を指摘しているように受け取られる。実際には、彼らは逆であって、問題はオペレーションの卓越性は必須条件であることを主張している。問題は戦略というものが現在でも非定型決定の典型で、理論化できていないことにある。既存の競争条件を優位に変えるものであるのだが、方法論的に確立していないとことに問題がある。今後の研究では、まずASCOSが製品戦略、特に新製品開発活動にいかなるインパクトを与えるかを確認する。研究仮説としては負ではなく正の効果を持つということである。この課題に関しては夏ごろまでに学会などでその成果を実証的に示して行く予定である。さらに、本課題を遂行する上で、実際の企業における行動をこのような視点からさらに深いインタビューなどを通じて追加的情報を得て、戦略的適合課題を、ASCOSを導入した枠組みを進化させる作業も予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業訪問調査において、年度内にすべて実施できない(主に企業側の都合)ことがあって、未消化になった。
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次年度使用額の使用計画 |
企業訪問調査は研究遂行上で随時おこなうことになっているので、そのための予算として次年度使用する予定である。
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