本研究の実績は、戦略的適合の概念として、戦略と実践の融合として捉え、製品/市場戦略と実践活動としてのサプライチェーン(以後SCとする)関連活動の統合性をいかにして確保できるかという視点から研究を進め、一定の成果を収めたことである。特に、従来の研究では欠如していた実践活動の捉え方に、絶対的SC指向戦略という概念を導入し、SCマネジメントで基本公式とされているLittleの法則に基づき実践活動の焦点を規範的視点から導入したことに新規性がある。それらの焦点は、リードタイム短縮、JIT性(ジャストインタイム供給体制)、適合品質強化、そして需要変動の抑制の4つである。その焦点に沿った活動は必ず経営的に有利な方向に働くというのが規範性の意義である。経営の実践活動でやらねばならないという活動と戦略を融合させるというのが本研究の意義である。戦略的適合は経営では重要な課題としてあり続けてきたが、その操作性に課題があった。絶対的SC指向戦略という概念の定義を実践活動との関連付けで行えたことによって、戦略的適合の研究上での課題であった操作性において明確な定義が可能になった。 製品/市場戦略との適合性確保という視点からは、絶対的SC指向戦略との関わり合いは、Littleの法則でいう時間当たり需要量で大きな接点が出てくる。真の戦略的統合は、需要量の創出とその供給を最適なバランス実現という形で定義することができる。すなわち、製品開発焦点と供給活動焦点を企業全体の操業という視点から最適なパフォーマンスを達成できるように調整するということである。その意味で経営実践では、製品開発能力とSC能力が均衡しながら相互に強化されていくように方向づけることが戦略的適合に沿った企業経営上の最大課題になる点を実証的に指摘した。その方向での実践ではいかなる経営行動が重要かという点については次なる研究課題となる。
|