研究課題/領域番号 |
26380527
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
平野 真 芝浦工業大学, その他の研究科, 教授 (80412435)
|
研究分担者 |
榊原 清則 中央大学, その他の研究科, 教授 (40114946)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ICT / IoT / ネットワーク / 産業集積 / 製造業 / 中小企業 / 技術革新 / 暗黙知 |
研究実績の概要 |
前年度の企業取材(新潟、山口、静岡、東京)により得られた事例の考察・解析を行い、共通的な課題の抽出に向け、考察を進めた。 1)多くの中小企業では、ICTやIoTなどのリテラシーはまだ不足しており、ネットワークによる仮想的な産業集積よりは、物理的地域集積の中で企業連携が行なわれている場合が多い。 2)しかし、特筆すべきは、手工芸的な伝統的産業においても、職人の暗黙知から出発して近代的工学の導入で、独創的な技術開発を行っている企業もあり、一部はICTと結びついて今までにないビジネスモデルの創出などにつながっている企業がある。 3)日本がモジュール化やコモデティ化で負けた製品分野ではなく、素材や材料分野、また光分野では未だに日本企業の存在感が大きいが、従ってこうした分野での改革が進めば、さらに日本の産業が大きく飛躍する可能性がある。 この流れの中で、研究成果は、国際会議や海外学術誌への投稿として発表し、すべて採択されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な企業の取材を進め、製造業中小企業の仮想的産業連携・産業集積の可能性について探った。その結果、ICTネットワークによる仮想的産業集積については、予測と異なり、そうした方向で進んでいる顕著な事例は発掘できなかった。しかし、逆に、比較的地味な工芸的産業分野で、思いもかけない技術革新が進んでおり、そのことで、グローバルニッチ的な成長企業が成長している事例が種々発掘できた。こうした企業においては、徐々にICTネットワークによる斬新なビジネスモデルの創出や新市場ドメインの開拓などに結びついたり、少なくとも今後そうした可能性を強く感じさせる状況を作り出していた。その場合、特定の産業分野に限らず、様々な仮想的産業集積効果を生み出す可能性はある。この新たな発見により、当初の思惑とはやや異なるが、現在日本の産業論として最も沸騰しているインダストリー4.0に対する日本の立ち位置を考える上で、重要な示唆が得られ始めている。こちらは、予想外の進展であり、総じて、まずまずの研究進展と考える。
|
今後の研究の推進方策 |
当初より予定していた製造業中小企業へのアンケート調査を実施し、日本の各地域の製造業中小企業のICTの関わり方、技術開発の状況、企業間連携や産業集積への方向性などを調査していきたい。またこのことと関連して、今後、企業の経営的要素がどのように技術戦略や事業戦略に影響を及ぼしているか、示唆を得ることを目的とした統計調査や解析を行っていく。またこうした議論の産業分野に関する依存性などについても議論していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に準備していた取材が先方の都合などで実現しなかったため、出張旅費に残額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年度に取材関係の旅費で使用する予定。例として、5月に鯖江地域への2回目の取材を予定している。
|