研究課題
ICTを用いた産業集積の形成状況を継続して調査した。本年度は、日本の工業団地の草分け的な存在である京都府の長田野工業団地を調査した。団地内企業約30社に聞き取り調査をしたが、こうした工業団地では物資運搬の利便性、市場への近接性、電力や水の供給などの環境条件などに関する立地条件が工場誘致に大きく作用し、誘致された企業の事業間にはほとんど関係性がない。逆にそのことで、特定の産業分野の浮き沈みに影響されない安定した税収源として自治体が運営・維持してきた。企業にとっての集積効果は光熱費や運搬費の低減といったきわめて限定的な要素だけであり、重要なのは団地内の企業間のネットワーク形成ではなく、個々の企業の独立した経営実績と持続性である。むしろ、他の工業団地との比較の中で、自治体側の地域経営の中で工業団地経営がどのように位置付けられ展開されうるか、という側面の分析が重要であることがわかった。すでに地理的な立地を基礎に形成されている既存の産業集積がICTにより変化していく可能性は比較的少ないと考えられ、こうしたことから消費者の側からの調査を試みた。楽天などのネット・ショップ・モールを特定の製造業にフォーカスして展開したものとして、ミスミ商事が挙げられる。ミスミ商事は機械部品などの購入をポータル化し、部品製造業者のある種の仮想的集積効果を生み出した。ミスミ商事の関係者に聞き取り調査を行ったところ、このビジネス・モデルが起点となり、印刷業におけるラクスルのほか、動物病院の備品産業のICTネットワーク化などが進んだことがわかった。また手工業産業に近いアート商品の販売においてもタグボートという企業がICTネットワークを基盤としたビジネスを展開しているという。このようなバリューチェーンの下流側で生じている産業のICTネットワーク化が徐々に上流にも影響を与えていく可能性が示唆された。
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International Journal of Entrepreneur and Small Business
巻: Vol.29, no.2 ページ: pp332-337
映像情報メディア学会誌
巻: Vol.70, no.4 ページ: pp.540-546
巻: Vol.70, no.4 ページ: pp.547-554
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