研究課題/領域番号 |
26380529
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
今井 雅和 専修大学, 経営学部, 教授 (80305391)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新興市場 / 経営能力 / 立地資産 / 共進化 / 生産分業 / 企業家行動 |
研究実績の概要 |
本研究の対象である「比較劣位優良企業」というのは,比較劣位産業にあって例外的に優れた経営成果を上げている優良企業である。それら企業は比較劣位産業ゆえに,通常は厳しい経営環境におかれるが,存続可能なだけでなく,高い競争力を保持している。それはなぜか,そして背景になにがあるのかを明らかにすることが,本研究の目的である。優れた経営戦略の策定と実行,それを可能にする組織能力の本源を探る。 初年度は,理論研究のレビューを踏まえたフレームワーク作りと「比較劣位」の意味を深耕した。そして,いくつかの会社への取材を通じて,それらの企業が市場環境の変化を冷静に見極め,自社の競争優位を発揮可能な分野を抽出する能力が優れていることを発見した。また,ニッチ市場を新たな市場開発につなげる経営戦略に優れていることもわかった。 2年目の昨年度も,比較劣位優良企業候補の発掘と取材を通じて,本プロジェクト研究を進めた。台湾の自転車メーカーおよび同部品メーカーへの数回にわたる取材を通じて,比較劣位産業が競争優位に転化し,主要企業が世界的リーダーに成長した軌跡とその要因を明らかにした。インドについては,取材はかなわなかったが,これまでの情報収集と分析を踏まえ,インド市場で情報通信分野の世界的企業が生成したり,国際ビジネスの新たなモデルが誕生したりしていることを踏まえ,新興市場ビジネスの将来を展望した。ロシアでは,市場経済化から四半世紀が過ぎ,エネルギー・天然資源などの主要産業ではない,サービス産業や縫製業などの周辺産業において優れた起業家が現れ,ロシアの市場経済が新たな局面に入っていることを示した。また,ボーイングやノキアンタイヤのような西側企業もロシアにおいて,かつてのロシアではあり得なかった企業家精神にあふれた企業行動を展開していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は理論研究にもとづくフレームワーク作りを行うとともに,「比較劣位優良企業」の発掘と取材を行った。2年目も引き続き当該企業の発掘と取材を進める一方,研究成果を学会発表と論文執筆を通じて明らかにした。 ただし,例えば,台湾の自転車メーカーおよび同部品メーカーについては,学会発表は行ったものの論文執筆には至っていない。また,2年目の取材成果の公表も一部に留まっている。インド,北欧,中近東,中央アジア市場での取材については,当初対象と考えていた候補企業を含め,現地経済の混乱等があり,計画に比べ,やや遅れている。 ただし,候補企業は当初より余裕をもってリストアップしており,それらの中から適切な企業を優先順位と取材可能性に鑑み,調査研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,「比較劣位優良企業」の発掘と取材を進め,事例にもとづいて,産業分析と企業研究を深めていく。学会発表を行うとともに,ペンディングになっている論文執筆を急ぐ。また,これまでの調査研究にもとづいた単著の出版も併せ行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に,計画していたインド出張が訪問先の都合により延期になったため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
出張計画をできる限り前倒しし,3年目の当初計画と併せ,着実に研究計画を進める。
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