本研究の対象である「比較劣位優良企業」というのは,比較劣位産業にあって例外的に優れた経営成果を上げている優良企業である。そうした企業が存続し,高い競争力を維持する理由を,経営戦略と組織能力の両面から明らかにすることが本研究の目的であった。 初年度と2年目は研究フレームワーク作りと精緻化に努めた。並行して初年度より順次実証研究を積み重ねてきた。最終年度の4年目も引き続き新たな事例の発掘に努めるとともに,これまでの研究成果を国内外の学会等の大会や国際会議で研究発表を行うことができた。 4年目のインタビュー調査は国内のみならず,中国,モロッコ,キューバを訪問し実施した。特徴的な事業を展開する日本企業および現地企業の経営戦略とマネジメント手法について聞き取り調査を行い,事例研究を積み重ねることができた。 モロッコに関する論説は,新興国がどのように自国の強みを発見し育成できるか,そして世界との関係で自国の強みを強化するにはどのような方策が有効か検討した。ロシアについての検討は,新規ビジネスの立ち上げ,競争優位を構築する起業家の企業者行動と経営戦略に注目し,ロシアビジネスの非連続性に力点を置いた考察を行った。キューバについても同様の視点から検討している。 研究発表は戦略研究学会の年次大会,同学会の定例研究会,ロシア・サンクトペテルブルク国立大学高等経営学院で開催された国際会議(GSOM Emerging Market Conference 2017)で行った。関連分野の多くの研究者と議論することで,本研究に関する考察を深化させることができた。
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