研究課題/領域番号 |
26380533
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
山口 裕之 東洋大学, 経営学部, 講師 (50509255)
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研究分担者 |
野中 誠 東洋大学, 経営学部, 教授 (30318787)
富田 純一 東洋大学, 経営学部, 准教授 (30396824)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 組み込みシステム開発 / 開発組織 / ソフトウェア開発 |
研究実績の概要 |
製品システムの高度化が開発プロセスおよび組織に及ぼす影響を明らかにするため調査研究を進めてきた。本年度は、カーナビの開発組織および競争状況を対象に調査研究を進め、開発タスクが加速度的に増大している点、タスク増大への対応行動が企業間で異なっている点、さらに対応行動が組織に及ぼす効果および悪影響について確認した。 近年、多くの製品領域において、機能の高度化を実現するうえで、組み込みソフトウェア(制御系ソフトウェア)への依存度が高まっている。これに伴い、開発活動におけるソフトウェア開発の比重が加速度的に高まっている。このソフトウェア開発タスクの加速度的増大に対処できるか否かが、製品機能を大きく左右するという点において重要な意味を持つようになっているのである。 そうしたタスク増大への対応の成否は、経営資源の多寡のみによって説明できるわけではなく、組織的施策の差異によって説明される部分が大きいことが確認された。1990年代後半から2000年代前半のカーナビ産業では、タスク増大への対応行動が企業間で異なっており、この差異が当該期間の競争地位の変動に影響を及ぼしていることが確認された。こうした発見事実およびそれに依拠した考察について、学会発表及び論文としてまとめている。 また、上記の調査研究からは、今後検討すべき課題として、開発プロセスと組織的施策の動態的な相互作用を解明・整理する必要性が明らかになっている。タスク増大に対する種々の施策は、開発プロセス(タスク分割のあり方や組織内で処理されるタスクの質)に変化をもたらすことで、別の組織的問題を引き起こすことがある。さらに、そうした施策の逆機能を緩和・回避すべく、別の施策が組織内で講じられることもある。こうした組織的施策と開発プロセスの動態的な相互作用の解明・整理については、27年度以降の研究において積極的に取り組んでいきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の中頃に調査対象を変更する必要が生じたためである。本研究の開始段階では、半導体露光装置産業を調査対象の軸に据えていた。しかしながら、その過程において、調査対象企業の窓口であった協力者の配属転換が生じ、調査対象へのアクセスが困難となってしまった。これをうけ、中心的な調査対象をカーナビゲーション・システムへと転換した。本年度中頃以降、調査研究を加速させたものの、計画に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究推進の体制は、当初の計画通り進める。具体的には、製品の複雑化が組み込みシステムの開発組織に及ぼす影響とその経路を明らかにするという目的の下、異なる専門領域を持つ3名が、異なる視点から分析を進め、それぞれの知見を交換しながら研究を進めていく。 他方で、研究方法(調査対象)については、当初の計画に変更を加える。当初の計画では、複数の産業を対象に調査研究を進める計画であったが、27年度末までの期間、特定の産業に調査研究対象を絞る。その理由は次の2つである。 第1に、現在の調査対象が、研究目的の追求に適した事例であるためである。現在調査を進めているカーナビゲーション産業では、1990年代中頃から、開発タスクが加速度的に増加している。さらに、そうした状況に対する対応は企業間で多様であり、その差異が競争地位に色濃く反映されている。こうした企業間差異の比較検討により、研究を推進できると考えている。 第2に、研究活動の効率化を図るためである。開発組織に注目する本研究では、開発プロセスについて詳細な検討が必要となる。さらにそのためには、技術特性や競争状況に関する調査および理解が必要となる。産業間では技術特性や競争状況が大きくことなるため、調査対象産業を広げるほど、調査量は加速度的に増大し、検討や考察の労力・時間が圧迫されてしまう。これを避けるため、27年度中は、カーナビゲーション産業に調査対象を固定して研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定した使用用途のうち、謝金が予定額を下回ったためである。これは、調査対象の変更によるものである。半導体露光装置メーカーへの聞き取り調査が困難になったことで、カーナビゲーションシステムへと調査対象を変更した。これにより、調査に若干の遅れが生じ、「インタビューデータのテープ起こし」「アーカイバルデータの収集・整理」といった作業の一部が27年度にずれ込んだ。これらを用途として計画していた謝金支払の一部が26年度中に発生しなかったため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度にずれ込んだ調査作業のアルバイト謝金として、27年度中に使用する計画である。現在、調査対象をカーナビゲーションシステムにシフトし、調査の遅れを取り戻すべく、積極的に調査作業を進めている。その調査補助者への謝金として使用する。
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