前年度の研究の結果として、同一価値労働同一賃金をめざす職務評価が普及する最大の契機となったILO100号条約の審議過程の詳細とその意義、およびILOでの審議に加わった米国政府代表と代表顧問フリーダ・ミラー(米国労働省女性局長)の役割をあきらかにできたが、本年度は、フリーダ・ミラーないし米国労働省女性局が、米国の男女同一賃金の推進と、そのための職務評価の推進に果たした役割について、考察を深めることに集中した。 米国における男女同一賃金の推進と、そのための職務評価の推進について、既存の英語研究文献の読み込みに努めた。その結果としてわかったことは、第二次世界大戦中から米国労働省女性局は男女同一賃金の推進に熱心であったことであり、1945年からは、同一賃金法案の米国議会提案を支持支援したことであった。しかし、職務評価は推進するものの、その当時も数種類があった職務評価の手法については、どの手法を採用すべきかについて、それほど関心がなかったことがわかった。 既存の英語研究文献は、もっぱら米国内の事情に研究関心を集中しており、フリーダ・ミラーとILO100号条約の関係は関心外であった。フリーダ・ミラーの個人文書はハーバード大学シュレジンジャー図書館に所蔵されていて、私は9月にそこを訪問し、全文書に目を通して、関係文書を写真収集した。年度の後半は、その分析に努力した。その結果、意外なこともわかった。その1つは、フリーダの娘エリザベスの個人文書もシュレジンジャー図書館に近年になって所蔵されたが、エリザベスは1951年のILO100号条約の成立時に、ILO職員であって、その個人文書の中に、フリーダの文書も相当含まれることであった。
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