本研究の目的は、製造企業のものづくりの仕組み(開発と生産システム)に焦点を絞り、時間サイクルという視点から競争力との関係について考察するものである。特に注目したのは、ものづくりにおいて「長い時間サイクル」を効果的に活用することが競争優位へと結びつくロジックである。 時間と競争力との関係に注目した多くの既存研究(タイムベース競争戦略、リーン生産研究、製品開発力研究、アジル経営研究、クロックスピード研究、事業システム研究など)では、スピードアップ(短い時間サイクルでの経営活動による競争力)という側面にばかり焦点が当てられており、その背後(底層)に流れる比較的ゆったりとした経営サイクル(長い時間サイクルでの経営活動)の重要性に着目されることは少なかった。とりわけ、ムーアの法則といった言葉にも代表されるように、半導体やインターネットを含めた情報技術(ICT)の進化速度が著しく高い今日、それに比例するようにスピード経営への注目度が加速しているように思われる。 しかし本研究を通じて明らかになったことは、現代の企業間競争の論理を考えるうえで、表層的で目に見えやすく、かつ速いものづくりサイクルの側面にのみ注目していては、企業競争力の実態を正確には明らかにできないということである。特に、高い競争力を発揮している企業では、長いものづくりサイクル(長い開発と生産サイクル、ロングセラー製品、長期にわたって活用できる基盤部品や意匠デザインなど)を活用しているという結果が、概ね仮説どおり確認できた。 今年度は、本研究の最終年度ということで活動の中心は、主に成果の対外的発表が中心となった。具体的には書籍2冊、論文2本、学会発表3本である。
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