本研究は、近年注目されている、3社以上の企業が国際間で共同出資をして合弁会社を設立する「複数企業間国際合弁(MP-IJV)」に注目する。既存の研究は「MP-IJVは成功率が非常に低い」とする一方で、「なぜ現実には多くの企業でMP-IJVが好まれるのか」を説明できていない。そこで 本研究では、Coalition Theory及び Faultline TheoryをMP-IJVに応用し、「(1)相対的に力の弱い企業が、潜在的に『2対1』の関係を作り出すために同国パートナーを含めた3社合弁を好む」、「(2)このようなMP-IJVでは事後のガバナンス変化が起きやすい」という理論仮説を提示し、実証研究する。 本研究は現在きわめて順調に推移している。まず、交付いただいた科学技術研究費を基にして、2014年度に東洋経済新報社より「海外進出企業総覧」のデータベースを購入した。これは1991年から2012年までの日本企業の海外進出状況を網羅したデータベースであり、ここよりMP-IJVを抽出した。その後、他の説明変数の入手状況などから、本研究では自動車部品産業に注目し、日本の自動車部品メーカーのMN-IJVの進出状況を時系列で整備した。また、他のデータベース(日本自動車工業会のデータ等)から、業界の市場不確実性などの説明変数のデータも整備した。結果として、データセットは完成し、実際に統計分析も進めている。統計分析の暫定的な結果も出ており、それは申請者の仮説をほぼ支持するものであった。この結果を踏まえて論文も作成しており、近日内に草稿も完成予定である。これを踏まえて、平成27年度内に学会誌への投稿を行う予定である。
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