第3次産業における承認のリテンションならびに生産性向上の効果を明らかにするため、企業等を対象にヒアリング、アンケート調査などを実施した。 その結果、管理職・上司などから部下に対する承認、すなわちほめたり、認めたりする行為によって、部下の自己効力感、内発的モチベーション、組織への帰属意識などが有意に高まることが明らかになった。また職場の空気がよくなり、社員の一体感が生まれるとともに、顧客との関係もよくなり、企業の成果にも好影響をもたらしたという報告もある。さらに第3次産業のなかでも業種や職種によって効果に差があることも示唆された。 一方、承認が直接リテンションの抑制にどのような効果をもたらすかについては、現在も複数の事業所において研究を実施中である。 研究成果の一部は、いくつかの研究会や学会などで口頭により報告している。また太田肇著『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)、『最強のモチベーション術』(日本実業出版社)などにも発表している。さらに、最終的に研究成果がまとまり次第、別の出版社から著書として発表するほか、学会等でも報告する予定である。ただ「承認」はA・H・マズローのいう承認欲求に働きかけるものであり、ほめたり、認めたりする行為は承認の一部にすぎず、長期的なモチベーションや業績の向上については効果が限定される。また業種や職種によっては顕著な効果が見られない。これらの点については今後の研究課題として残されている。
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