研究課題/領域番号 |
26380548
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
玄場 公規 法政大学, イノベーション・マネジメント研究科, 教授 (80313039)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サービスイノベーション / 多角化 / 企業戦略 / 定量分析 / 研究開発 |
研究実績の概要 |
日本の製造企業は、1980年代まで高い収益性を誇っていたが、近年、その収益性は低下している。そのため、単なる技術力だけではなく、別の付加価値も加えた新規事業の創出が期待されている。特に、情報技術等を活用した高度なサービス事業の展開や付加価値の高い製品と組み合わせることで新しいサービス事業を行うなどの「サービスイノベーション」への関心が高まっており、その先進事例や競争戦略の研究も数多く行われている。しかしながら、日本の製造企業の異分野の進出、すなわち多角化が収益性に結び付いているのかという根本的な問いに関する実証的な分析結果は未だ乏しい。この観点から、本研究は、近年の日本の製造企業のサービス化と収益性との関係を豊富な定量データを元に分析を行った。また、日本の製造企業の収益性低下の主要因として、研究開発の効率性の低下が指摘されるが、この点についても実証結果の蓄積は未だ十分ではない。そのため、経済産業省の企業活動基本調査の個票データを用いて、製造企業のサービス化率及び研究開発費と収益性との関係についても実証分析を行った。分析の結果、2000年代前半までの日本の製造企業においては、サービス化と収益性に関して実証的な結果は得られなかったが、近年は、サービス化比率が高いことが収益性に貢献していることが示唆された。その一方で、研究開発費比率と収益性との関係においては、1990年代のデータでは正の関係が示唆されるものの、2000年代のデータからは、有に負の関係にあるという実証結果が得られた。この結果は、近年の日本製造企業の研究開発活動の苦境を端的に示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の製造企業のサービス分野への多角化に関する定量分析については計画通りに一定の実証分析結果を得た。その結果については、国内の学会に発表しており、今後国内外の論文誌しへの投稿を検討している。また、サービスイノベーションの事例分析については、計画通りに対象企業の分析を終えており、分析結果について国内外の論文誌への投稿を検討している。以上より、本研究課題の進捗はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
サービスイノベーションの定量分析及び事例分析の結果を整理し、国内外の学会において発表及び論文投稿を行い、成果の普及啓発のみならず、イノベーション戦略の専門家との議論を深めることとする。事例分析においては、外部との連携、組織学習等に着目した多様な視点からのフレームワークを検討し、新たな分析を行う。また、定量分析については、上場企業などの公開データベースも活用して、さらに豊富な統計データを収集し、サービス分野への多角化及び研究開発活動の収益性への貢献について詳細な分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内における他大学の研究者との打ち合わせを行う予定が一件無くなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算とともに国内の他大学との研究者との研究打ち合わせ及びインタビュー調査、国内外の学会における学会発表などに使用する計画である。
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