研究課題/領域番号 |
26380551
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
森田 雅也 関西大学, 社会学部, 教授 (40247896)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 裁量労働制 / 自律性 / 境界決定の自律性 / 適者適職 / 自己規制の強い管理 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、理論的な研究と併行して、26年度に行った質問票調査の詳細な分析と裁量労働制導入企業への聞き取り調査等の実証的研究を行った。そこから以下の点が明らかになった。 裁量労働制は、1987年の制定以来、対象業務と対象者を拡大してきた。しかし、HRM施策としてみると、導入当初から、成果主義徹底のための施策、創造性発揮のための施策、時間意識払拭のための施策という3つの側面をもっていたが、これらは現在も変わっていない。そして、近年、ワーク・ライフ・バランス(WLB)達成のための施策という側面が新たに加わってきている。 裁量労働制は境界決定の自律性の発揮を制度的に保障しているが、仕事の遂行を支援してくれる上司の行動が認められる時に、境界決定の自律性はより発揮されている。また、境界決定の自律性を発揮している人はWLBに関する満足度も高い。それゆえ、裁量労働制がもつWLB達成のための施策という側面を機能させるためにも、仕事遂行の支援などの上司の行動は重要となってくる。 また、裁量労働制がうまく機能している組織では、自己管理能力が低い人や、顧客との接触が多い職務のように、自分で時間管理することが難しい職務に就いている人は対象者にしないなど、「適者適職」が徹底されている。さらに、労働時間の上限など一定のルールを設けて、そのルールを破った人は制度適用者から強制的に外すといった「自己規制の強い管理」が行われている。裁量労働制が「悪い長時間労働」を導かないようにするためにも、「自己規制の強い管理」をいかに貫徹するかが、裁量労働制導入組織にとっての課題である可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたアメリカでの聞き取り調査が、調査予定企業の状況もあり実施できなかったことが最大の理由としてあげられる。また、国内企業の聞き取り調査も、業務繁忙等を理由に本年度内での調査許可が得られなかったものがあった。 このように実証研究が予定取りに進まなかったために、課題の進捗状況は「やや遅れている」と言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる今年度も、実証研究に重きを置きながらも、理論研究と並行して課題を推進していく。これまでの研究から導出された「境界決定の自律性」と「自己規制の強い管理」という2つの概念を用いながら、裁量労働的な働き方の実態と今後の方向性を明らかにしていく。 2015年度に予定していた海外出張を取りやめたために、当初予定より2016年度予算が増えたので、質問項目を「境界決定の自律性」と「自己規制の強い管理」関連に限定し、対象者も絞った定量的調査も追加的に行う。同時に、聞き取り調査も継続して行う。 それらをもとに3年間の成果を論文として学会誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」でも触れた通り、予定していたアメリカでの聞き取り調査を行うことができなかったことと聞き取り調査のための国内出張が少なかったために、旅費に計上していた予算を中心に使用しきれない額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定通りに実証研究と理論的研究を行っていくが、「今後の研究の推進方策 等」でも触れた通り、質問項目と対象者を限定した質問票による定量的調査を追加的に行う。これにより交付決定額に残額を生じることなく3年間の課題遂行期間を終えることができると考えている。
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