研究課題/領域番号 |
26380552
|
研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
古田 克利 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 講師 (20612914)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 技術者 / キャリア / 人的資源管理 / IT技術者 / ソフトウェア技術者 / キャリアの停滞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、科学技術人材を研究対象とし、キャリア発達の促進と停滞の問題をケイパビリティ・ビリーフ(能力への信念)の視点から捉え、科学技術人材のマネジメントのあり方を問うものである。2015年度は、技術者のキャリアの停滞に関する分析を実施した。ひとつは、技術者を雇用する企業の経営者、人事責任者、そして技術者本人から得られたインタビューデータの分析である(質的分析)。もうひとつは、技術者を対象に実施されたアンケートデータの分析である(量的分析)。 質的分析においては、次に示すキャリアの停滞メカニズムが明らかにされた。すなわち、技術者のキャリアの停滞メカニズムには、大きく2つのルートが存在する。第1のルートは、体力・視力・記憶力などの衰えによる、キャリアの停滞である。第2のルートは、特にIT業界に顕著な下請け構造ゆえの成長機会の逸失が生み出す、無力感の形成によるものである。そこでは、下流工程の単価が低下する一方、中高年技術者の賃金が年功的に上昇することによる処遇上のパラドクスの存在が、求める中高年技術者像をプロジェクト・マネジメントなどのビジネス・プロフェッショナル職に極端に制限する様態が明らかにされた。そして、求める中高年技術者像の制限(ビジネス・プロフェッショナル)が、技術者のキャリアの停滞をより一層強化する。 量的分析においては、技術者の能力限界に対する本人の意識(能力限界感)に着目し、能力限界感と年齢の関係を、アンケートデータの分析を通じて検討した。分析の結果、次の3点が明らかになった。1)加齢に伴い、能力限界を感じる者の割合が高まる。2)どの年代においても、男性より女性の方が、能力限界を感じる者の割合が高い。3)どの年代においても、他の職種より情報処理・ソフト開発職の方が、能力限界を感じる者の割合が高い。今後、技術者のキャリア発達の促進に関する分析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析に必要なデータを入手することができたため、2015年度は分析作業に集中して取り組むことができた。また、これまで蓄積してきたインタビューデータの再分析を行い、仮説モデルを確定することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
アンケートデータの分析を進めると同時に、学会発表および論文の形で成果を発表していく。また、これまでの分析結果をフォローするための、技術者インタビューおよびアンケート調査を実施していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費にかかる費用の誤差が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
学会発表などにかかる旅費として使用する予定である。
|