研究課題/領域番号 |
26380554
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
木村 三千世 四天王寺大学, 経営学部, 教授 (60310710)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人的資源管理 / 労働時間 / ワーク・ライフ・バランス / ワークシェアリング |
研究実績の概要 |
近年、非正規雇用の若者や、育児や介護により労働時間に制約があり、短時間勤務を余儀なくされる労働者が増加する一方、定年年齢が65歳となったことによって労働者の就労形態はますます多様化する傾向にある。さまざまな就労形態の労働者がワーク・ライフ・バランスを実現するためには、ライフステージごとに必要に応じて多様な就労形態が選択できることが求められる。しかし、この多様化する労働者を従来の方法で一律に管理することは難しい。ワーク・ライフ・バランスを実現するために労働時間管理をシステム化して円滑に行う方法のひとつとして、多様就労型ワークシェアリングを導入することが有効であると考えられる。これは、従来、長時間労働を前提として一人の労働者が担当している仕事の一部を他の労働者にシェアすることを促進するためにも効果的である。 2000年頃にワークシェアリングが実施された状況と現在は異なっている。仕事がないためにワークシェアリングを実施するのではなく、特定の労働者に偏る仕事を効率的に労働者間でシェアすることが課題である。そこで、必要に応じて労働者に仕事を柔軟に割り当てられる制度としてワークシェアリングを導入する方法について追究するための検証に取り組んでいる。 しかし、一人の労働者が長時間労働を前提として担当している仕事を二人の短時間労働者に分割することは簡単ではない。まず、仕事を分割することが困難であり、さらには労務管理において労働者の評価が難しく、組織が負担する人的固定費である社会保険料や労働保険料、交通費などの経費の増加も問題となる。 以上の点を踏まえ、過去のワークシェアリングの実績等の検証と照らし合わせながら、近年、導入が進んでいる短時間勤務やフレックスタイム制、在宅勤務(テレワーク)等を活用し、現在の労働環境下で機能する就労形態の再構築の提言ができるよう検証を継続していくものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
郵送による調査票を使った調査を想定して準備を進めていたが、下記の理由から調査研究が遅れている。 1.先行研究で実施された調査票の質問項目の検討を行ったが、以前に実施された労働環境と現在は異なっていることから質問項目の決定に時間を要した。 2.調査票に加えて、インターネットを活用した調査結果回収をしたほうが良いとアドバイスを受けたことから、インターネット用回答画面の準備に時間を要した。 3.今回の予備調査として調査対象企業600社(料金受取人払)に対し、調査票を郵送したが、回収率が極めて低かったことから検証できるに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
調査項目について再検討を行うとともに、インターネットを活用した調査回答用サイトの利用を並行して行うことが本当に必要なことなのかについても併せて検討する。さらに調査票郵送先も再検討したうえ、調査を引き続き実施するとともに、聞き取り調査を併せて実施することとする。 調査対象企業から少しでも多く、有効な回答を得るための謝金について、受取確認の手続きが煩雑であるとのことから見合わせていたが、今後は実施できるように検討し、効果的に活用して調査を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施した予備調査(対象企業600社)において謝金の領収書の回収を100%実施することは難しいと考えられたことから、謝金を活用することなく調査したことや、(公的機関が実施する調査と重なり)調査票の回収率が悪すぎたため、入力作業等の依頼をするに至らなかった。 有効な調査票の回収率を上げる目的でインターネット版調査項目を用意したことにより、調査の実施が遅くなったこと、調査テーマに関連する「ワーク・ライフ・バランスに関する調査が多く実施されていることから調査に回答しないことにしている」という回答があったことが象徴するように調査の回答率が極めて低かったことからインタビュー等の実施が先送りになっているため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は予備調査の回収率の低さを含めた結果を踏まえ、本調査の調査票を十分見直し、効果的に実施することに加え、調査に対する謝金も有効に活用して有効回答を増やす。さらに、調査対象企業等を直接訪問するなどして、検証機会を積極的に確保する。検証した調査結果を報告し、専門家の意見も仰ぎながら目的とする検証を進め、ワーク・ライフ・バランスを実現するための多様就労型ワークシェアリングの活用について、精緻な提言ができるように取り組んでいくこととしたい。
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