研究課題/領域番号 |
26380554
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
木村 三千世 四天王寺大学, 経営学部, 教授 (60310710)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人的資源管理 / ワーク・ライフ・バランス / 労働時間管理 / ワークシェアリング |
研究実績の概要 |
近年、情報通信技術によるグローバル化が浸透していることから、中小零細企業に至るまで企業間競争が激化している。この状況下において、わが国では少子高齢化が顕著となり、労働力人口の減少が課題となっていることから、企業は労働者の就業ニーズに対応し、多様な労働者が持ちうる能力と限られた労働時間をフルに活用し、成果を出すことが求められている。 さらに労働者の課題として、それぞれのライフステージに対応した働き方ができなければ、職業生活が継続できなくなる可能性があるため、ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)に配慮する企業は増加している。育児・介護休業法改正等の後押しもあり、育児休業制度は大企業では浸透しており、それは出産・育児による退職者が激減したことからも明らかである。しかし、育児は女性の役割という従来の性別による役割分業の意識は根強く、男性の育児休業取得者は少ない。一方、親族の介護のために制度を利用する労働者は未だ極めて少ない。調査データ等から、すでに親族の介護をしているが、かなり深刻な状態になるまで企業の介護に関する支援制度を利用せず、仕事と両立しているという労働者は女性だけではない。 今後、労働力人口が減少する時期に、第一線で働く労働者が親族の介護等の理由から休職や退職に至る前に支援対策を講じたり、変化していく職務に対応するために能力開発が必要となる場合に企業は備えなければならない。多様な制約が生じやすいライフステージにおいて、その労働者のライフイベントに合った働き方が可能となる制度(在宅勤務等)が活用でき、場所に拘束されず、一労働者の仕事を多様に分割するワークシェアリング等の可能性も検証しながら、WLBを支える制度の実施状況について調査・研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.一昨年度、アンケート等による調査を実施したが、回収率が極めて低かったことから、その翌年度以降は企業への聞き取り調査を行うことを中心に試みた。しかし、本研究助成開始以降に始まった政府の働き方改革に対応するための対策を検討している企業では、その実施状況について、まだ公開できる段階ではないということから聞き取り調査は予定どおり進まず、少しずつ遅れが生じている。 2.電話による聞き取り調査も試みたが、特徴ある制度等を実施している企業には問合せが多く調査依頼も少なくないようで個々に対応してもらうことが難しかった。WLBを整える制度設計・運用等に対して積極的に取り組んでいる大企業は、現在取り組み中であることから慎重であり、そうした制度設計等に関心がない中小・零細企業においては回答いただく内容がないという状況である。企業のデリケートな領域となることから、聞き取りが結構困難であった。 3.上記のとおり、大企業については一定の情報が公開されていることから、聞き取り調査としては踏み込んだ内容となるため調査の受け入れに時間を要している。中小企業においても調査を実施することとしたが、その調整に時間を要し、年度末に準備が整ったことから、翌年度早々に郵送による調査票を用いた調査を実施する予定とした。
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今後の研究の推進方策 |
1.前年度末に調整、準備が整った中小・零細企業に対する郵送による調査票を用いた調査を商工会と連携して行い、現状の課題を明らかにする。 2.一定の規模以上で特徴のある企業については、前年度に聞き取り調査を依頼して、時期待ちとなっているため、適当な時期に企業の聞き取りを実施する。 3.企業におけるWLBを支える制度等の特徴を明らかにするための聞き取り調査は、現在の状況では難しい側面があるため、広く集められた企業情報のデータベースを活用して、企業のWLB実現のための支援制度の実施状況について検討し、本年度実施する聞き取り調査項目の見直しを行うとともに、特徴ある企業を厳選、抽出して、引き続き聞き取り調査を実施することを目指す。 4.多様な働き方、および、日本型ワークシェアリングについて有用性を明らかにして提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.遠方の企業への聞き取り調査が予定どおり実施できなかったことに加え、実施できた場合においても、できる限り宿泊しない方向で行ったため、宿泊費を使用していない。 2.電話などの通信費等については助成金を使用していない。 3.聞き取り調査やデータ処理のための謝金は使用していない。
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次年度使用額の使用計画 |
1.本年度は、企業から直接得られない情報について、信頼性が高いデータベースなどを効果的に使用することによって、客観的基礎データを収集・確認する時間を短縮するとともに基礎データ等を検証の上、予定している特徴ある企業への聞き取り調査を十分に行う。 2.調査・研究を進めるにあたり、交通費・宿泊費、報告書作成費等として使用する予定である。 3.多様な働き方を啓蒙するための試みを検討する。
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