本研究の目的は、小売業者とサプライヤー(卸売業者、生産者)との協働関係の性質を深く理解し、その活動を類型化することであるが、これまでの事例を中心とした研究を通じて、製造業者と小売業者がマーケティングについて協働することは、双方の収益や成長にとって重要であることが明らかとなっていた。 そこで、製造業者の立場から、小売業者や流通業者、コンサル等の外部企業との協働関係を捉え、それがどのように市場知識の収集や製造業者の成果に貢献しているかについてアンケート調査をおこなった。アンケートはウェブによっておこない、700サンプルを回収した。現在、分析作業の途中ではあるが、消費財の独自ブランドをもつ製造業者に限定した345サンプルの簡易的な分析によると、特定の外部企業と製品の販売で協働関係を持っている企業の方が市場知識を多くもち、それを組織内で共有し、適応した行動をとっていることが統計的に示されている。また、収益性や成長率のような成果指標においても、外部企業と協働する企業の方が有意に高い。さらに、外部企業としては、小売業者との連携が高い成果を上げている傾向が見られた。サンプル数がやや小さく統計的には有意にはならないが、例えば、売上高の成長を競争者と比較して「1:非常に劣っている」から「7:非常に優れている」とした成果指標では、小売業者と連携する企業の平均が4.77、卸売業者と連携する企業が4.52、コンサル・広告代理店が4.19、となっている。事例研究から想定されたように、マーケティングにおける製造業者と外部企業との関係性は、小売業者、卸売業者、コンサル等という3つのカテゴリーにおいて異なっており、さらに、そこから得られる市場知識の性質も異なっていることが示唆されている。
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