本研究は、消費者が特定製品カテゴリーに存在する異なる複数のブランドに対する選好をいずれも形成しないような状況(以下「ブランド無選好」と表記する)に注目し、それがいかなる要因によってもたらされ、かつ、結果としてどのような効果を生むかについて、特に消費者の認知構造という視点から理論的、かつ実証的に検討を加えることを目的としている。ブランド無選好という、理論的にも実務的にも重要な問題に消費者視点から接近することにより、①理論的には、特にブランド研究におけるブランド知識やブランド・パリティー(ブランド間類似性)、ブランド・コミットメントなどの主要な諸概念の精緻化を促し、②実務的には、効果的なブランド構築のためのマーケティング戦略策定のための具体的な指針を提供することを試みる。 初年度、次年度においては、本研究の主要な概念であるBrand Parity(異なるブランド間における知覚された類似性)について、特にオンライン文脈における経験データを分析することで、消費者のいかなる探索行動がブランドの特異性を形成しうるか検討した。これを受けて最終年度は、大きくわけて以下の二つの研究活動を行った。第一に、これまで発見されたオンラインにおけるBrand Parity形成に関する知見の精緻化である。具体的には、①さらなる文献レビューの実施、②分析結果の多面的検討および追加分析の実施、③国外の関連分野の専門家へのヒアリング、④論文のリバイズと公刊、といった活動を行った。第二に、同様の知見について、リアル店舗において収集されたデータをもとにその経験妥当性を広げる試みがなされた。具体的には、①関連文献の詳細かつ包括的なレビュー、②収集されたデータの加工および分析、③発見事項の国内外における学会での発表、④国外の専門家へのヒアリング、である。以上より、研究枠組の拡張が試みられた。
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