研究課題/領域番号 |
26380574
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
久保 知一 中央大学, 商学部, 准教授 (40376843)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 流通チャネル / フレーミング / 制御焦点 / ガバナンス |
研究実績の概要 |
製造業者は最終顧客へ製品を届けるために、流通業者を用いない直接流通もしくは彼らを用いる間接流通を選択することができる。間接流通を選択した場合、製造業者は流通チャネルを形成し、流通業者といかなる垂直的関係を構築するかという問題に直面することとなる。 既存研究は、製造業者と流通業者の垂直的関係をガバナンス・メカニズムとみなして、例えば取引費用を最小化したり、組織能力を活用したり、将来を重視するという視点から製造業者がガバナンス・メカニズムを選択していると考えてきた。したがって既存研究は経済計算に基づく垂直的関係の形成を扱ってきた。しかし、現実には経済的に同じような条件の企業であっても、垂直的関係を形成するための交渉段階において、交渉の提案に対して受諾するかどうか差が出てくるものと考えられる。そこで本研究が提案したリサーチ・クエスチョンは、流通チャネルにおける垂直的関係をめぐる企業間交渉において、同じ提案を受け入れる企業とそうでない企業が生じるのはなぜかという問いであった。それに対する本研究の仮説は、交渉をどのような問題として定義するかというフレーミングが交渉結果を左右するというものであった。そして交渉のフレーミングは、制御焦点理論が論じる交渉当事者のモチベーションの違いと、プロスペクト理論が論じる参照点の違いによって生じると想定し、概念枠組と仮説を提唱した。本年の研究成果は2016年7月の国際学会 (Global Marketing Conference) にて報告される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概念枠組の構築と仮説の提唱が進んでいること、それらをまとめた研究の国際学会での発表が受諾され2016年7月に報告予定であることを踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年は、提示された概念枠組と仮説の経験的妥当性を吟味するべくいくつかの実験を行う予定である。当初は予算や研究施設の制約からウェブ実験と教室での簡易的な実験を行う予定であったが、経済実験専用の実験室が手配できたことから、実験室実験を行う予定である。ただし、実験室実験の被験者は学生が中心になることから、内的妥当性は高いものの、企業間交渉という実験の文脈に照らして、外的妥当性が問題視される。したがって、企業の実務家を対象としたウェブ実験によって外的妥当性の補完を試みる。研究予算の多くは被験者への謝礼とウェブ実験に用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室実験と企業アンケート調査を次年度に繰り延べたために次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り延べられた実験室実験および企業アンケート調査に支出する予定である。
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