研究課題
最終年度である本年は、卸売業者が小売業者と戦略提携を形成する意思決定を題材として、ウェブ実験による実証研究を行った。取引費用分析は、特定の相手にしか役立たない関係特定的投資を必要とする取引に対して、投資者はホールドアップのリスクを感じることから、その取引を受託しないと主張する。しかし、現実には関係特定的投資を伴う取引が行われており、取引費用分析の理論仮説との齟齬があった。そこで、卸売業者が小売業者から戦略提携のオファーを受けたとき、そのオファーを受け入れる企業とそうでない企業がいるという現象を、取引費用分析に制御焦点理論の視点を導入することで説明することを目的として研究を行った。オファーを受ける卸売業者を意思決定に対して異なってフレーミングさせるために、促進焦点と予防焦点に割り当ててマニピュレーションした。促進焦点グループについては、提携交渉にあたって獲得したいこととその手段を筆記させ、予防焦点グループについては、同じく提携交渉にあたって回避したいこととその手段を筆記させた。学生対象の予備実験の後、卸売業者の実務家を対象としたシナリオ実験をウェブによって行った結果、制御焦点の違いが戦略提携交渉の意思決定に強い効果を及ぼすことと、その効果は関係特定的投資を伴う場合に大きくなることが見出された。この研究結果は、取引費用の最小化という経済合理性にもとづいてチャネル構造を論じてきた取引費用論を、交渉者のモチベーションやフレーミングを導入することで修正するものである。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Marketing Channels
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Journal of Transformation of Human Behavior under the Influence of the Infosocionomics Society
巻: 2 ページ: 25-30
2016 Global Marketing Conference Proceedings
巻: 2016 ページ: 1141-1145