現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分かりにくいとされるイタリアのデザイン主導型の製品開発の仕方について、広範な文献を読み解くことで、通史的に把握することができた。イタリアのデザイン理論は、ドイツのウルム造形大学におけるデザイン研究に影響されつつも、独自の発達を遂げたのであり、その中心人物はジッロ・ドルフレーズ(Gillo Dorfles)、ジュリオ・カルロ・アルガン(Giulio Carlo Argan)、エンツォ・フライテイリ(Enzo Fraiteili)などである。1950~1960年代のイタリアのデザイン黄金期を飾るブルーノ・ムナーリ、エンツォ・マーリ、ヴィーコ・マジストレッティ、マリオ・ベッリーニ、マルコ・ザヌーゾ、アンドレア・ブランジィ、などのデザイナーは、これらのデザイン理論家達と対話しつつデザインの実践を進め、とりわけ大量生産・大量消費のアメリカ型の産業モデルへのアンチテーゼを意識して、デザイナーと職人との協業による高級品の制作とその結果としての「衰退した地方自治体(コミュニティ)の再生」を目論んだのであった。そういったコミュニティの再生には企業家側も協力したのであり、その理念モデル(代表例)がアドリアーノ・オリベッティ(Adriano Olivetti)である。イタリアにおける経営者のモデルは、フィアットとオリベッティがあり、デザイン主導で高級品を制作し、同時にコミュニティの再生も達成することを理論家したのはオリベッティである(「L'ordine politico delle comunita,Edizione di comunita」・「L'ideal de la Communaute,Edizioni di comunita」・「La fabbrica e la comunita,Movimento comunita」・「Il cammino delle comunita,Edizioni di comunita」・「Society, State, community,Edizioni di comunita」などが、この問題に関するオリベッティの著作である。)高級カシミアを手掛けるクチネッリも、オリベッティ・モデルに従って、ソロメオという街を復活させたのである。
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