平成28年度は、過年度に実施した理論研究と消費者調査結果をふまえて、食品PB/NBの選択行動を軸に解析作業を整理した。その結果、国・地域別の消費者購買行動、とくに ブランド・店舗選択に対する共通性や差異性をはじめとする関連事実、それとメーカーや小売業の「適応」行動との因果構造に関する理解を得た。具体的には安心と豊かさを求める消費者のブランドおよびチャネル・小売店舗選択、NB及びPBに関する顧客ロイヤルティ構造、メーカー間、小売業者間、および両者間の競争・協調関係などに関する国際比較分析の実証結果を整理・集約した。 なかでも、平成26年度に行った日本での消費者調査では、PBと小売ブランド・コミュニティを取り上げ、①PBロイヤルティ構造は企業・製品・店舗のイメージが互いに相関し合っている、②企業・製品・店舗のイメージは、ブランドとの同一化に正の影響を与える、③ブランドとの同一化はコミュニティ同一化に正の影響を与える、④コミュニティ同一はロイヤルティに正の影響を与える、といった事実を明らかにした。『プライベートブランド最新動向2015』と題するレポートでは、わが国の進化・成長するPBの現状や浸透状況を5万人の消費者購買データを駆使して解明した。 平成27年度の日英比較調査からは、①日英両国において企業・製品・店舗イメージが互いに相関をもつ、②日英両国において、企業・製品・店舗イメージはPBロイヤルティに正の影響を与える、③英国と比べ日本では「地元に密着した会社である」ということが企業イメージに対し、高い正の影響を与える、などの解析結果を導くことができた。 以上、日英米3ヵ国の業界特性、製品特性、流通システム特性、さらに歴史、経済、文化、社会などに関する考察を通じて、当初設定した理論枠組みや仮説の検証、修正も行い、新しい理論的・実践的な知見を得た。
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