これまでに明らかにされてきた広告効果モデルでは考慮が不充分であった、広告コミュニケーションの受容に関わる消費者の広告に対するリテラシー(メタ認知的知識)を考慮に入れた広告効果モデルの構築を目指した。具体的には、米国等で90年代半ば以後議論が重ねられてきた「説得知識モデル」とその周辺概念に着目し、これらの考え方を、既存の広告効果モデル(情緒型モデル)に取り入れた拡張を検討した。 まず、説得知識概念の尺度開発を行ったが、その結果、説得知識概念には相反する複数の要因(次元)が取り込まれており、Friestadらの元々の説得知識概念を尺度化することは望ましくないことを確認した。そのうえで、消費者の広告主一般の専門性を評価する次元と消費者の広告の機能に関する理解度の次元とを踏まえた簡易的尺度をもとに説得知識の測定を行うこととした。 プリテストを経たうえで行った日本国内での本調査からは、上記尺度を用いて測定した国内消費者の説得知識の得点が明らかになった。研究当初の想定と比べて説得知識の程度にデモグラフィック特性別や居住地域別での明確な差異はみられなかったが、性別や年齢層の傾向などを検討することができた。 そのうえで、構造方程式モデリングを用いたデータ分析を通じて、説得知識概念を取り入れた広告効果モデルの構築を行った。その結果、説得知識が広告態度を通じて、ブランド態度、購入意向に影響を与えることが明らかになった。 本研究の過程で、広告一般や通信販売一般に対する消費者の認識、説得知識概念の尺度化の試み、概念精査、広告効果モデルの構築に至ることができた。その一方で、一個人が特定の広告に触れた際に説得知識を活性化し広告を評価するメカニズムについてさらなる考察を必要とすることが分かった。今後の研究課題としてとらえたい。
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