当該年度の研究実績は、科研費(課題番号23530531)を通じて調査研究としてトロント(カナダ)とニューヨーク(米国)のスコアリング研究者を訪問し、スコアリングの現状と今後の方向性を確認し、統計手法とスコアリングの実装に関して議論した。スコアリングの新たな技術の導入が進められている一方リスク管理を行う上でその論理的根拠が必要となるため、いまだに伝統的な統計手法により開発が進められている。現在、欧米のクレジット・ビューローは、債権者、債務者、債権回収機関、ベンダー、裁判所の記録などが公表されているデータ・プロバイダーから情報を取得し、ほとんどの場合、この情報は3つの最大の信用情報機関、Equifax、Experian、TransUnionから発信されている。ほとんどの信用情報機関は、クレジットカードに焦点を当てているが、携帯電話の請求書、公益法人の請求書などの支払い履歴など、より包括的な情報にアクセスする機関も存在している。信用情報機関は、個人の信用履歴に基づいて信用スコアを計算するために、さまざまな手法を使用している。特にロジスティック回帰分析は多くの国で開発の中心的な手法として使用されている。
またリーズ(イギリス)のリスク管理企業の研究者を訪問し、リスク関連のスコアリング調査とイギリスの信用情報機関のExperianの現状調査を行った。海外が進める信用情報機関の役割の拡大の中、日本の信用情報機関の役割が未発達な状況であり、データの統一化やデータ項目の拡大などが必要である点を確認し、シミュレーションとデータ測定による同化のリスク判別の分析を行った。さらに、台湾のリスク研究者を訪問し、中国や台湾が進めるノンバンク系金融機関のリスク管理分析のモデリング手法と信用情報機関の役割の調査も行った。特に、近年急速な発展を遂げているFINTECHのノンバンクへの応用がすでに実践されており、それに伴うリスク管理の変化を調査した。
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