研究課題/領域番号 |
26380595
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 雅明 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90202473)
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研究分担者 |
間普 崇 関東学園大学, 経済学部, 准教授 (10438749)
松田 康弘 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70451507)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 温室効果ガス / 非財務指標 / 企業価値 |
研究実績の概要 |
2015年度は研究を始めて2年目であり、昨年度行った基礎的研究の成果として、2つの研究報告を行った。 1つは日本管理会計学会全国大会(2015年度)における「財務・非財務指標による研究開発活動と利益変動の関係についての一考察」であり、ここでは、企業利益変動の不確実性と非財務指標である特許出願数の関係について検討した。この研究は、非財務指標の部分を温室効果ガスに変更することにより、企業利益変動と温室効果ガスの関係に焦点を当てることが可能になることが期待できる。 2番目の発表は、APMAA(Asia Pacific Management Accounting Association)における報告で、“The Experimental Analysis of the Relationship between Greenhouse Gas Emission and Corporate Value”というものである。この報告は、昨年度、日本管理会計学会で行った報告の分析をさらに精緻化したものであり、温室効果ガスと企業価値との関連を分析しているという意味で、本研究プロジェクトの中核といえるものである。この報告は国際学会で行われ、「二酸化炭素排出量に関する尺度(炭素利益率)と企業価値に関連がある」という結論に興味を持ったらしく、報告後、アジア諸国の研究者から多くの質問があった。また、報告後、海外の学術誌2誌から投稿の依頼がきた。この意味で、ある程度高い評価を得たと考えている。 モデル分析では、温室効果ガスの削減がInnovationと関係するのではないかと考え、Innovation Managementにおける会計情報の意味を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と今年度で実験的な分析を行い、温室効果ガスと企業価値の間にある程度の関連性を見いだすことはできた。しかし、温室効果ガスの変化と企業価値の向上(利益率の増加)を結びつけるメカニズムについては解明が行われていない。この問題は、企業内部が選択する戦略にも関わることと考えられ、本研究課題の範囲ではなく、また別の研究課題となる可能性もある。 本研究は、環境関連指数として炭素利益率(=利益÷温室効果ガス排出量)が有用であることを見いだしたが、これ以外の環境関連指数を未だに見いだしていない。実際の企業において、環境関連の報告書を作成する場合、どのような点を重視するかなどについて、数社のインタビューは行ったが、今後の分析で有望となる指数を見いだしていない。 前年度は、共同研究者間で情報共有ができる情報システムを構築した。しかし、炭素利益率については、数年分しかデータの収集が行われていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はプロジェクトの最終年度であり、これまで研究してきた成果を、外部で報告したいと考えている。具体的には、今年9月に明治大学で行われる日本管理会計学会全国大会と10月に台北大学(台湾)で行われるAPMAAの年次大会で発表を行いたい。また、これまでの成果をDiscussion Paperとしてまとめ、可能な限り海外のジャーナルに投稿したいと考えている。 「現在までの進捗状況」でも述べたように、本研究では、炭素利益以外の有望な尺度を見いだしていない。今年度は、企業のCRS担当者へのインタビューを試み、何らかの指標を見いだしていきたい。 上述したように、温室効果ガスの変化と企業価値の向上(利益率の増加)を結びつけるメカニズムは、チャレンジングではあるが重要な研究課題である。もし、この点についてある程度の方向性を示すことができれば、今回の研究を新しい研究課題へとつないでいくことが可能になる。 今回の研究では、企業の環境政策についてインタビュー等を行った。しかし、インタビュー担当は比較的規模の大きな企業が多く、CSRは社会的な責任を果たすための活動として行っており、環境に関する変数と企業業績との間の関係を見いだすことが難しかった。そこで、環境への取り組みと、現場の関係がより観察しやすい中小企業に着目してみることも1つの方策と考えている。 本研究プロジェクトは、今後も温室効果ガスと企業価値との関係を継続的に分析していこうと考えている。このため、これまで収集した温室効果ガスのデータベース化も最終年度に取り組まなければならない課題と考えている。
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